淫獣捜査スピンオフ 国民的アイドルとの休日
【5】三つ目の要望室
膝の上に玲央奈をのせあげるとお互いの体温とを確かめながら余韻を愉しんでいた。
だが、流石にそろそろ限界だった。ウトウトとし始めたので就寝することにする。
「本当に、これで寝るのかい?」
玲央奈による三つ目の要望は、SM用のスリープサックによる拘束だった。
それを抱き枕にして一緒に寝て欲しいというものなのだ。
「夢の中で俺はなにをしているんだ?」
これまでの要望も含めて玲央奈が夢の中で俺に調教されたことの再現らしい。
もちろん俺が拘束した女性を抱き枕にするような経験もなければ願望もない。彼女がネットで仕入れてきた知識が多いに影響しているのだろう。
言うなれば、俺の姿はしているが調教して責めているのは玲央奈自身だ。彼女のマゾとサド部分がそれぞれ作用してお互いを成長させあっているようなのだ。
(そういう意味では、これも願望であるのは間違いないだろうな)
バイブレーター付きのパンツのみの姿になった玲央奈を床に寝かすと、両手を身体の左右に置いた姿勢で革袋に詰めこんでいった。
爪先から首まで黒革の袋に包まれた彼女を、さらに幾重ものベルトで締め上げていく。
首、胸の上下、腰、太もも、膝下、足首と順々にベルトが締められて、ボディラインがクッキリと浮き上がってくる。
「苦しくないか? それと緩いところはないかい?」
「……大丈夫かな、指先すらもう動かせないぐらいピッチリよ」
「ほほぅ」
袋詰めに興味はなかった俺だが、玲央奈の姿をみていると嗜虐欲が湧いてくるから不思議なものだ。
仕込まれたバイブレーターを遠隔操作するコントローラーを手にすると、いきなり最大出力で稼働させる。
「ひぎぃぃッ、な、なにを……ひぃぃぃぃッ」
強烈な刺激を秘部に受けて、玲央奈が顎を反らせて悲鳴のような喘ぎをあげる。
だが、厳しく拘束された首から下はギチギチとベルトと軋ませて芋虫のように蠢くだけだ。
「ひぃッ、と、とめてぇぇッ」
先ほどの絶頂の余韻で肉体が敏感なままなのだろう。感じすぎて悶絶する姿に愉悦を感じてしまう。
それに浸り過ぎてついついバイブレーターを停止するのが遅れてしまった。慌てて止めた時には玲央奈は息も絶え絶えといった様子だった。
「あぁ、悪い。つい虐めたくなってね」
「もぅ……でも、これはこれで悪くないかも」
この一年以上もの間、夢の中で調教を受けてきた玲央奈は、自分でコントロールできない状況に置かれて支配されているのが嬉しいのだろう。
だから人が行き交う通りでの絶頂体験もそうだが、予想外な俺の暴走も玲央奈は素直に受け入れて存分に感じてくれている。
キラキラとした瞳で見上げて微笑んでいる彼女の髪を俺は優しく撫でていた。
「そんじゃ、もっと期待に応えてやらないとな」
黒革製の全頭マスクを取りだすと、玲央奈の頭に被せていく。
目と口はくり抜かれたタイプだが、それに追加でバルーンギャグを噛ませる。
「ん、んんッ」
シュコ、シュコッとポンプを握りしめて口腔いっぱいにゴム風船を膨らませれば、もう舌は押し付けられて呻き声もほぼ聴こえない。
次に目尻に涙を浮かべた青い瞳をアイマスクで覆ってしまえば頭部も黒く塗り潰されてしまう。
身体の自由だけでなく、喋ることも見ることも奪われた彼女だが、仕上げとして大型のヘッドフォンまで装着して聴覚すらも奪ってしまうのだった。
「んふーッ……ぷすーッ……」
呼吸用の小さな鼻孔から聞こえる呼吸音と、上下する胸の膨らみが玲央奈の存在を感じさせてくれる。
今や抱きまくらとなった玲央奈の抱き心地を確かめるべく俺は彼女を抱え上げるとベッドまで慎重に運んでみせた。
「それじゃぁ、お休み」
ヒンヤリする革の感触を感じながら俺も闇の中で瞼を閉じてみせる。
連日の激務で予想以上に疲れていたのだろう。ほどなくして深い眠りへと落ちていた。
「ん……朝か……」
カーテンの隙間から差し込む日差しを受けて俺は目を覚ましていた。
久しく感じていなかった実に心地よい目覚めだった。
「枕が良かったのかもな」
横に転がる黒革に包まれた玲央奈の姿につい口元が綻んでしまう。
革の匂いに交じり玲央奈の甘い香りと甘酸っぱい牝の臭いが鼻孔に届いていたのだ。
彼女の履いているバイブレーター付きのパンツは、昨夜から完全には切られておらず微弱で稼働させ続けていたのだ。
その為にトロ火で炙られて逝くにいけない状態で朝を迎えているはずだ。
案の定、革袋の上から胸の膨らみを揉んでやると鼻先から甘く切なげな媚泣きを響かせはじめる。
コントローラーの出力を徐々に上げてプルプルと震えはじめる彼女の反応を堪能する。
「おっと、逝くのはまだお預けだ。これぐらいじゃ夢の俺に負けてしまいそうだしね。もう少し、その状態を堪能してもらうよ」
ヘッドフォンを外して語り掛けるとバイブレーターの出力を再び微弱へと戻す。すると、唯一自由に動かせる彼女の首がイヤイヤと左右に大きく振られる。
絶頂寸前でのお預けをくらい頭を掻きむしりたいほどもどかしいのだろう。
それを何度か繰り返すと、拘束された全身を軋ませて大いに悶え泣いてくれた。
その姿に満足すると、俺はひとりベッドを降りる。
拘束されたままの玲央奈を残して熱いシャワーを浴びると今度は身支度を整えていく。
昨夜のパスタで目ぼしい食材を使い果たしてしまい、ろくな材料が残っていなかった。
久々の休日だという玲央奈のために料理の腕を振るうつもりで買い物に行こうと思い立ったのだ。
「どうせだから一緒に散歩でもしようか」
ちょうどいいキャスター付きのキャリアバッグがあるのを思い出して、クローゼットの奥から引っ張り出してくる。
そのままスリープサックに詰められた玲央奈を折り畳んでベルトで固定すると、ちょうどキャリアバッグの中にすっぽりと収納できた。
「近くに二十四時間営業のスーパーがあるんだよ。この時間なら人も少ないしちょうどいいだろう」
「んーッ、んん――ッ」
体育座りの姿勢で詰め込まれた玲央奈に再びヘッドフォンを装着すると、キャリアバッグを引きながら自宅マンションを出ていく。
ゴロゴロとキャスターを鳴らして歩く姿は、旅行先から帰ってきた風に見えなくもない。
そうでなくても冬のこの時期はスノーボードやスキー板を抱えている連中もいるので、とくに不審がられることもないだろう。
鼻歌交じりにコントローラーでバイブレーターの出力を上げながら意気揚々とスーパーへと向かうのだった。
「ふぅ、ただいまっと」
スーパーで買い物しているうちに他の店舗も営業を開始する時間となっており、ついでに幾つかの店を回ってきたので、帰宅したのは昼過ぎになっていた。
「さて、どんな具合かな」
キャリアバッグから引き出した玲央奈をゴロリとカーペットの上に転がすと、その頭部からヘッドフォンとアイマスクを外してやる。
涙を溢れ出していた目は焦点があっておらず意識も朦朧としていた。
バルーンギャグを外してもこちらの呼びかけにも応じず、ただ虚空を見上げて口端から涎を垂れ流しているだけだった。
「またやり過ぎたかな?」
「――ひぎぃぃッ」
バイブレーターを最大出力に引き上げられて玲央奈が顎を反らせて悲鳴を上げる。
ショック療法だが、効果はあったようだ。
現状を把握できずにいながらも、激しく身を震わせて盛大に喘ぎ声を響かせはじめる。
「おはよう、玲央奈」
「ひッ、と、止めて……あぁぁン、逝く、逝っちゃうぅぅ」
「逝きたかったんだろう? 存分に逝ってていいよ」
「せ、せめて……ぐぅぅぅ、しゅ、出力を……あぁン、下げてぇぇ」
刺激が強すぎると訴える玲央奈だが、それを無視して食事の準備をはじめる。
強すぎる刺激は時には苦痛でもある。快楽に喘ぎ、身悶えし、泣き叫ぶ美声をBGMに調理を進める。
肉に下味をつけて、食材を刻み、炒め、オーブンを温める。
そうして、食欲をそそる香りを漂わせて俺の自慢の料理がテーブルに並ぶ頃には、玲央奈は何度も絶頂を向かえてグッタリとしてい。
そんな彼女を抱えあげて膝の上へと座らせる。
「貴重な休日だからね、午後も満足させてあげるからね」
「……はい……お願いします」
耳元への囁きを受けて、玲央奈は被虐の悦楽への期待で肩を震わせていた。
彼女が浮かべる恍惚とした表情は、もう立派な牝奴隷のものだった。
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