虜囚将校 ―日のいずる国の好敵手の陥落ー

【2】招かざる来訪者

 綾乃を満足するまで犯しつくしたふたりは、気を失った彼女が目覚めるまで休憩を取ることにした。
 バスローブ姿でソファでくつろぐヴェロニカの前に、手際よくティーセットが用意される。マイセンのカップに濃く煮出した紅茶が注がれていった。

「うん、いい香りね」

 アールグレーの芳醇な香りが室内に広がるのを堪能する主の前で、比奈子は手慣れた様子でサモワールという独特な形状をした金属製の湯沸し器から熱湯を追加していった。
 紅茶の濃さをはじめとしたヴェロニカの好みは把握していた。それでも彼女が口にして満足そうな笑みを浮かべると自然と頬が緩んでしまう。
 すかさず準備しておいたジャムも差し出す。彼女好みの甘酸っぱいベリー系のジャムだ。それをスプーンで舐め、濃いめの紅茶を口にふくむ。それがロシアンティーと呼ばれるロシア圏で好まれる紅茶の飲み方なのだ。

「さて、そろそろ良いかしら、報告とは別に私になにか用があるのでしょう?」

 ティータイムを堪能したところでヴェロニカから話を切り出した。
 比奈子がなにか望むことがある場合、自ら口にすることはない。主が察してくれるのを待っているのだ。
 だが、そのサインは密かにだしている。今回の場合は、医療カルテをわざわざ届けに訪れたところから、ヴェロニカは気づいていた。

「はい、実は少々厄介なことが起こりまして……」

 彼女が報告したのは、日本から新たな将校がこの施設に来訪するというものだった。
 本来ならばこの僻地の基地に派遣される将校は一名だけ、入れ替わり時の引き継ぎで一時的に二名になることはあっても、任期の途中で増えることがないのが通例だ。
 それは施設を実質的に管理している財団が、厳しく人の出入りを管理しているからであった。
 それを変えてまで来訪する人物にヴェロニカは興味をひかれる。
 だが、すぐに比奈子の様子から来訪者の目的よりも、訪れる人物そのものに問題があることを嗅ぎとっていた。

「その将校は、どういった人物なの? 貴女がよく知っている相手なのでしょう?」
「はい、来られる方は近衛 楓(このえ かえで)少佐です。皇少佐とは幼馴染み……というよりライバルといった方が適切でしょうか。皇族に近しい一族の方で、それを大変誇りに思ってる女性です」

 綾乃と同じく高貴な家柄で、幼い頃からふたりは文武で競い合い、お互いをライバルと認める仲であるという。
 皇を猛々しい炎のような将兵とするならば、清涼のような静かなる知将だろう。常に冷静沈着でときには冷徹な判断も下す。その有能さは綾乃と同様に若くして少佐という立場になっていることからも容易にうかがえる。
 人望、実力、容姿に加えて家柄のよさと綾乃と肩を並べ、それぞれの上層部から将来を期待される存在なのだ。

「ですが、血筋による特権や優遇などの不条理な力を使う、横暴な部分もあります。ときには下級兵を駒のように切り捨てる冷徹さがあります」

 その点は綾乃と大きく違うところだった。泥水を啜ることをいとわずに最前線に赴く綾乃は下級兵士に人気が高い、その代わり無謀な指示をだす者には相手が同僚や上官だろうとも容赦がなく噛みつく。
 対する楓は、その冷徹さゆえに厳しい判断も下してみせる。大局を見据える指揮官としては当然であり上層部の評価は高いが、最前線で戦う兵士らには無慈悲に感じられてしまうようだ。
 比奈子も楓を教官として配下にいたことあるのだが、その際も随分とキツく当たられて激しくプライドを傷つけられていたのだ。
 立場上、やもえず厳しくしていた部分もあっただろう。それが比奈子の目には血筋に対するプライドをもつ楓が、貧しい平民の出である自分を差別的に扱ったように感じてしまったようだ。
 比奈子の中には、密かに己の出生に対する劣等感があるのをヴェロニカは見抜いていた。
 そのため彼女からの報告には主観による歪みが含まれているのも理解している。その上で、その感情を利用するのが彼女の手段なのであった。

(さて、一時的な滞在ならやり過ごすことも可能だけど……)

 長い特別任務に就いていた楓は、特別に与えられた二ヶ月の休暇を綾乃が配属されたこの施設で過ごすことにしたらしい。
 僻地の施設で体調不良で倒れた親友を見舞おうという考えのようだが、人の出入りを厳しく制限されている施設故に、通常ならばその申請は受理されていないはずだ。
 だが、それが通ってしまうあたりに、比奈子が特権を感じるのも仕方ないのかもしれない。

(近衛家は確か皇族に近しい一族だったわね、ならば当人が望まずとも周囲が勝手に配慮するのでしょうね)

 普段は冷静過ぎるほどの比奈子が随分と感情を露にしていた。この様子では二ヶ月もの間、楓の相手をさせて、綾乃の不在を上手く誤魔化すのは難しそうだ。

(ならば、いっそのこと考えを変えてみようかしら……)

 ヴェロニカは知り得た情報を組み合わせて、素早く検討にはいっていた。
 その中には、比奈子が口にしていない本当の願いも含めている。
 そして、立案したある計画を、目の前にいる従順な下僕へと告げるのだった。


 
 その日、雲のはるか上空の高高度を飛行する機体があった。
 純白の流れるようなラインを描く美しいボディーは、まるで羽を広げた白鳥のようで、白い軌跡を残しながら一直線に南極の施設を目指していた。
 機体からは国籍のマークが消されているが、それは日本帝国空軍が大戦末期に開発していた超音速攻撃機だった。
 他の類をみない猛スピードで防空網を突き破り、敵の中枢部を叩くという無茶なコンセプトで開発されたもので、ブースターを使用すれば理論上、地球上のどこにでも弾道軌道で舞い降りられることになっている。
 残念ながら大戦には完成が間に合わず、実戦に投入されることはなかった。戦略研究所の格納庫で眠っていた不遇の試作機なのだ。そのコックピットシートに漆黒の耐Gスーツ姿で身を埋める近衛 楓の姿があった。
 冬季に入った施設の周辺は長期にわたって気候が荒れる。本来ならば航空機での接近は避ける時期なのだが、この高高度を飛行する機体ならば接近も可能であると楓の要望を聞き届けた陸軍上層部が用意したものだ。
 雲海を抜けると、雪が舞う悪天候が期待を出迎える。ガタガタと激しく揺れる機体を素晴らしい腕前で制御するのだった。


「……来たわね……憎らしいほど時間通りね」

 比奈子は、管制塔の窓から飛来してきた機体を双眼鏡で確認していた。
 雲の隙間を縫うように、可変翼を広げて純白の機体が舞い降りてくる。
 誘導灯を点灯させた滑走路では、受け入れのために急ピッチで積もっていた雪を取り除かれていたのだが、航空機の接近を知らせるアナウンスに、除雪作業をしていたスタッフが慌てて退避を開始する。
 それが終わりきらぬ間に、ライディングギアを下ろした機体が滑走路に強引に着地してきた。
 だが、氷を溶かしきれていない滑走路ではブレーキが効かないのだろう。機体後部からバラシュートを展開して減速を試み、さらに逆噴射までおこなう。
 急制動のかかった機体は、それでようやく速度を落として管制塔の前で止まるのだった。

「相変わらず、強引な女ね」

 牽引車によって地下へのエレベーターに誘導されていく機体を見下ろしながら、比奈子は吐き捨てるように言い放つ。
 普段の実直な姿とかけ離れた苛立ちを隠さぬ物言いに、顔見知りの管制スタッフが驚いたように振り向く。
 だが、その時には普段通りの振る舞いをする彼女であり、聞き間違いかと首をひねってしまう。
 そんな彼女も招かざる来訪者を出迎えるために、急ぎ地下へと向かうのだった。


「驚いたわね、地下にこんな大規模な施設があるなんて……」

 駐機スタッフが用意した梯子をつかい降り立った楓は、漆黒のヘルメットを脱いでみせる。
 ボブカットに切り揃えられた艶やかな黒髪がハラリと舞わせ、高貴さを漂わせる美貌があらわになる。
 涼やかな眼差しで、和服もよく似合いそうな和風美人であった。周囲で作業していたスタッフもおもわず手を止めて見惚れてしまうほどだ。
 社交界では、綾乃と楓が『麗しの双華』と称されていたのも納得である美貌だろう。
 周囲から注目される中、優雅に歩いてくる彼女を、先回りしていた比奈子が送迎車を用意して出迎えていた。

「ご無沙汰しております、近衛教官」

 比奈子は士官学校時代に、教官をしていた楓の下についたことがあった。
 皇族に近しい近衛一族の令嬢を前線に送り出すわけにもいかず、当時の上層部は扱いに困った彼女に教官の職を与えてみたのだ。
 だが、上流階級にいた彼女には下々の感覚はまだわからないこともあり、随分とトラブルも多かった。
 その上、彼女自身が有能すぎたのも原因で、自覚ないままに血が滲むような努力で首席に上り詰めていた比奈子のプライドを随分と痛めつけてしまっていたのだ。

「えぇ、久しぶりね、風見少尉……あぁ、今は中尉になったのね。デリー攻防戦以来かしら」

 大戦中にインド北部に位置する巨大都市の周辺で激しい攻防戦があった。圧倒的な戦力の敵を前にして降伏か撤退を迫られていた。
 だが、逃げ出した無能な上官に代わり指揮を取ることになった楓は、戦線の維持を決断した。大量の民間人を待避させるには多くの時間を稼ぐ必要があると判断したのだ。
 そこで敵を押し止めていたお陰で増援にきた綾乃の別動隊と挟撃することができ、結果的に敵に大打撃を与えることができた。
 だが、その戦線維持のために多くの兵を失っており、指揮下にいた大勢の部下を失った彼女自身も負傷して戦線を離脱させられていた。

(その後、軍の上層部は彼女を昇進させて、彼女を勝利の女神として戦意向上のために利用して、優遇していった……)

 そういうこともあって上流階級の特権をひしひしと感じさせる楓を、比奈子は随分と嫌っていたのだ。

「早く綾乃のお見舞いに行きたいわ、悪いけどこのまま向かってくれる?」
「わかりました、では、車にお乗りください」

 内に隠した感情を微塵も感じさせず、比奈子は普段と変わらぬ様子で用意していた送迎車に楓を案内する。

(えぇ、すぐに綾乃にも会わせてあげますよ、楽しみにしてて下さい)

 親友である綾乃にようやく会えると意気揚々として乗り込む楓と、それに密かにほくそ笑む比奈子を乗せて、送迎用の電動車は静かに走り去っていった。

 

 ジャラジャラと擦れる金属音を響かせて鎖が巻き取られていた。それに吊られるのは両腕を高々とあげさせられた軍服姿の女性将校――近衛 楓であった。
 そこは窓もない十畳ほどの薄暗い部屋だ。床は建材が剥き出しで、四方を囲む壁は強化コンクリートと殺風景な室内だ。その中央に彼女は吊り上げられていた。

「うッ……うぅぅ」

 靴底が床を離れたことで身体は完全に宙へ浮いていた。それによって両肩にかかる体重で激しく痛むのだろう。意識を失っていた楓が覚醒の気配をみせはじめた。
 そんな彼女を照らすように正面から強力なライトの光が向けられる。

「うッ……こ、ここは……どこ?」

 暗闇の中で吊られている自分の状況をうまく理解できないのだろう。貴族的な気配のある美貌を曇らせた彼女は、いまだも朦朧とする意識の中で必死に記憶を探ろうとする。
  
「そうだわッ、確か風見中尉とともに送迎車に乗って……それから彼女がくれたドリンクを飲んだはず……まさかッ!?」

 長時間の飛行で喉が乾いていたのだろう、顔見知りの部下に差し出されたドリンクを疑いもなく飲み干していた。その直後、急激な睡魔に襲われて意識を失ってしまったのだ。
 ならば、この状況をつくりだしたのが誰かは明白だった。

「えぇ、犯人は私ですよ、近衛少佐」

 強力な光を発するライトの向こうから人影が歩み出てくる。その人物、風見 比奈子は愉悦に浸っていた。

「無様に吊られた姿が、よくお似合いですよ」
「……どういうつもり?」

 悪意ある笑みを浮かべる相手に、切れ長の目が細められて静かな殺意が向けられる。
 高貴な出のお嬢様といっても、そこは流石は実力も確かにある軍人である。肌をビリビリと震わせる殺気を放ってきた。
 それに一瞬だが気圧されるものの、相手は拘束されてそれ以上は抗えない。その事実が比奈子に獲物を捕獲した喜びを再認識させていた。

「――ふ、ふふふッ……そうですねぇ、端的にいえば、私は貴女のことが気に入らないのでしょうね」
「…………?」
「不思議そうな顔をしてますね。そういう鈍感なところも嫌いですよ。家柄もよく、実力もある、いまや名声すらもッ、貴女はあらゆるものを手にしているッ……だからねぇ、もぅ妬ましくて、腹立たしくて、貴女のことをグチャグチャに壊してあげたいんですよ」
「そんな理由で……ここまでしたというの?」

 温室育ちだった女性将校には悪意を向けられることが稀で、比奈子が凶行に走った理由がうまく理解できないのだろう。
 だが、そんな彼女の同意など得る必要もない。邪悪な笑みを浮かべながら比奈子は、吊られた哀れな獲物にカツカツと歩み寄っていく。

「な、なにを……や、やめなさいッ」

 胸元をまさぐられて制服をはだけさせられる。露になった下着を剥ぎ取られ、小振りだが形の整った美乳を露出されてしまう。

「きゃッ、な、なにをやって――あぁ、やめ、やめてぇぇッ」

 今度は下半身を脱がされそうになって流石に抵抗を試みてくる。
 だが、いくら武道に秀でてようが両手を吊られた状態ではたいした抵抗もできない。
 あっという間に下半身から衣服が抜き取られて裸にされてしまうのだった。

「うふふ、あーッ、おかしい……お尻を出した姿がよく、お似合いですよ、楓お嬢様」
「よ、よくも……よくもやってくれたわねッ、こんなことして、タダで済むと思ってるの?」

 人に素肌をさらすこともそうだが、ここまで屈辱を味わせらたこともなかったのだろう。白手袋をはめられた手が強く握られて震えていた。
 恥辱に顔を染め上げて身を震わせると、ギッと怒気をはらんで視線で射抜いてこようとする。
 だが、二度目となれば耐えることも容易い。涼しい顔で受け流して、比奈子は余裕の笑みすら浮かべてみせる。

「えぇ、そうです、そういう貴女の表情が見たかったんですよ、もっと楽しませて下さいね」

 両腕を吊られた楓の周囲を歩きまわり、その無様な姿を目に焼き付けている。その後ろ手には隠し持っていた鞭が持たれていた。
 それを背後にまわった瞬間、尻肉へと振り下ろすのだ。

――パシッ

「――くあぁぁぁッツ」

 肉を打ち付ける乾いた音が室内に響き渡り、苦悶の声が楓からあがる。
 不意打ちからさらに、二撃、三撃と風切り音とともに鞭が白い柔肌を襲う。
 ビシッ、ビシッと鞭打たれるたびに白く裸体がくの字に曲がり、次々と鞭の痕が刻み込まれていった。

「はぁ、はぁ、はぁ……あははッ、泣いて赦しでも請いますか?」
「だ、誰が――くあぁぁぁッ、い、言うもんですかッ」
「それは結構なことですッ!!」

 肉体を襲う衝撃に端正な顔を歪めながらも、気丈にも睨み返してみせる。
 その反応に比奈子は大いに満足していた。

「そうです、そうですよねぇ、流石は近衛 楓少佐です。そうこなくては、これからの楽しみも半減してしまいますからね」

 額に浮いた汗を拭い、手にしていた鞭を近くのテーブルに置きながら呼吸を整える。お陰で、興奮で血がのぼっていた頭も冷めて、冷静さを取り戻していた。

「ふぅ、つい力が入ってしまいましたね」

 次に比奈子が手にしたのは鎖に繋がれた枷をふたつだ。それぞれ足首に装着していき、懐から取り出したコントローラーを操作すると、その二本の鎖もそれぞれ天井へと巻き取られはじめた。
 ジャラジャラと鎖にが巻き取られて徐々に鎖の遊びがなくなると、今度は枷が装着された両脚が吊りあがりはじめる。

「や、やめて……あぁぁ、止めてぇぇ」

 いくら力を込めようとも機械の力に抗えるはずもない。すぐに両脚を広げてV字開脚するようなポーズを強要されてしまった。

「あぁぁ、そんな……」
「あらあら、楓お嬢様たら、お股を開いてはしたないですね」
「くぅ、だ、誰のせいで――はぅ」

 空中で大股を開くように吊られた楓。その無防備な秘裂へと細い指が触れると、それだけで楓は顎を反らせて身悶えしてしまう。

「あら、凄く感度がいい……えッ? もしかして、ご自分で触られていない?」
「あぁぁ、そんなところ、くぅぅ、さ、触るわけ――あぁぁぁ、や、やめてッ、触らないでぇぇぇ」
「うふふ、触られただけで、こんなに慌てちゃって……じゃぁ、中は……すごい、綺麗なピンク色ですね」

 聖域とも呼べる秘部を好き勝手に触れられて、嫌悪の声をあげ続ける。
 だが、その矛先が端正に切り揃えられた柔毛に潜む、陰核へと向けられると、それもできなくなった。
 包皮から剥き出されて指で摘まれると、目の前には星が飛ぶほどの衝撃を受けてしまう。指先から逃れようと身体は勝手に動き、くの字に曲げられた腰はビクンビクンと跳ねてしまう。
 すでに口からでるのは言葉ではなく、ヒィヒィと短い悲鳴しか出ていない。
 その無様な姿に触発されて、比奈子の被虐欲は高ぶっていった。
 カメラで様子をうかがっていたヴェロニカが見兼ねて止めたときには、楓は強すぎる刺激に失禁までしてしまい、完全に気を失っているのだった。


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