年下の彼女はツインテール(バッドエンド2)

【2】致命的な失敗をしちゃいました

 その日の放課後は、珍しくノノとは別行動をとっていた。
 ノノはクラスメイトの買い物に付き合うらしく、相手は以前にトラブルに巻き込まれて助けたこともある女生徒だった。

(ノノと親しくしてくれるのは嬉しいけど、なんか俺には当たりが強い子なんだよなぁ)

 それでも友人との時間を大切にしてもらいたい俺は、狙っていたスーパーのタイムセールのために別行動を取っていたのだ。

(よーし、確保できたぜ)

 大量の戦利品を抱えてホクホクしながら帰宅すると、すぐに夕飯の準備に取り掛かる。
 ひとり暮らしを始めてから続けている自炊だが、凝り性な俺は随分とレパートリーを増やしていた。

(ノノは、本当に美味しそうに食べてくれるしな)

 小柄な身体のどこに入るのかと不思議になるほどよく食べてくれる。
 その食べっぷりは清々しいほどで、作る方もやり甲斐がでるというものだ。
 白菜と挽き肉を大量にゲットしたその日は、久々に餃子にチャレンジしてみるつもりだった。

「挽き肉に味をつけてから、ニンニクと、生姜、白菜とニラに長ネギと刻んでいくと……貰ったザーサイも追加して……」

 中華包丁で食材を刻み、手早く混ぜ合わせていく。
 今回は水餃子をメインで食べて、余ったら焼き餃子と揚げ餃子にするつもりで大量に作っている。
 すでに何度か試していて、寝かしておいた生地に餡を包んでいくのも手慣れたものだ。
 トレイに綺麗に包まれた餃子が次々と並んでいった。

――コンコンッ

 料理の準備も終盤に差し掛かった頃、玄関のドアをノックする音が響く。
 エプロン姿で応対すると、扉の向こうには黒い壁が立ちはだかっていた。

「――へッ? なんだぁ」
「こんばんは、ちょっと――」

 頭上からの声に見上げれば、ニッコリと白い歯をみせる黒人女性の顔がある。
 厳つい顔の俺がいうのも何だが、白い歯を見せて微笑む姿は不審者だ。考えるよりも先に身体が反射的に動いていた。
 最後まで言葉を聞く前に、問答無用で扉を閉めると鍵をかける。
 そのまま身を翻して六畳一間を駆け抜けると、そのまま外へと飛び出していた。
 物干し台のある小さな庭を抜けて、ブロック塀を飛び越える。
 我ながら惚れ惚れとする華麗な動きは、数々の襲撃に対応しているうちに身体が覚えたものだ。
 アスファルトの路面に着地して駆け出そうとするのだが、その頭上から黒い影が被さってきた。

「おやおや、お出かけですか?」

 顔を上げれば目の前には先ほどの黒人女性が何食わぬ顔で立っていた。
 息も乱さず、笑顔を浮かべている。大柄な外見に似合わず身軽らしい。

「そのつもりだったけど、止めるわ」

 改めて来訪者を観察すれば、相手が教会関係者が着込む黒い修道服を身にまとっているのに気づく。それで黒い壁と誤認したらしい。

(それにしても、デケェなぁ……)

 百八十センチと平均以上の身長である俺が見上げるほどの巨漢だ。縦にも長く横幅もある。その威圧感は凄まじいものだ。
 その背後に隠れるようにして、もう一人の人物がひょっこりと顔をだす。
 10代とおぼしき金髪碧眼の少女だ。同じくシスターが着る修道服で小柄な身体をつつみ、緊張した様子でジッとこちらを見ている。
 大柄の女性とは対象的に、瞼を閉じれば消えてしまいそうな儚げな印象を与えるような存在だった。

(どういう組み合わせだ?)

 少なくともすぐに危害を加えてくる気はないようだ。
 取り敢えず、逃走をあきらめた俺は素直に彼女らの話を聞いてみることにした。

「粗茶ですが……」

 畳の間に置かれた卓袱台の上に湯気をたてる湯呑を置く。その向こうには、大柄な黒人シスターと儚げな金髪美少女のシスターが座布団に正座している。
 なんとも奇妙な光景だが、数々の騒動で耐性ができていた俺は、自分でも驚くほど冷静でいられた。
 だが、取り出されたタブレットの画面を目にして緊張で顔を強張らせる。

(――ノノッ!?)

 卓袱台に置かれたタブレットの画面には、後ろ手に拘束されたノノの姿が映っていたのだ。
 制服姿で膝をつく彼女の目にはアイマスクが被せられており、スカートが脱がされている。
 そのせいで下半身は、先日に買い物に付き合ったピンクのショーツと黒いニーソックスだけの姿にされているのだった。
 座席を取り外したワゴン車の中なのだろう。ノノの脇には同様の姿にされて横たわる女生徒の姿もある。

(彼女を狙われたのか……)

 恐らく分断されて人質にされたのだろう。そうでなければノノを無傷で捕らえるのは難しいはずだ。

(……いや、そうでもないか……)

 単体での戦闘行動では圧倒的な能力を発揮するノノだが、それ以外では持ち前のドジさかげんが発動してポンコツになることが多い。
 暗殺者として特化して育てられた故の弊害らしいのだが、そんなドジな部分も含めて俺はノノを好いていた。
 
「これが二時間前……そして、こちらが一時間前だね」

 画面が切り換わると手術室とおぼしき空間に二人はいた。
 様々な医療機器が並ぶ部屋の中央に並べられた大の形をした拘束台、そににうつ伏せにされた姿で固定されていた。
 衣服はすべて脱がされて全裸の状態だ。未成熟で肉の薄い肢体が手足を広げた状態でさらされてしまっている。
 その周囲を手術着を着込んだ者たちが取り囲んでいるのだ。

「んん――ッ」

 目元をアイマスクで覆われたままの彼女らは、口にゴム棒の口枷を噛ませられていた。
 意識はあるようだが身体は薬物で弛緩させられているのだろう、ピクリとも動かせずにいるのだった。
 そんな無防備にお尻を差し出している少女らに対して、男らは奇妙な器具を手にして近づいていく。

(なんだ……あれは?)

 外見は金属製のミミズといったイメージだ。フレキシブルに動く胴体部分に、膨張する末端部分。
 長さは十五センチほど、太さは先端のニセンチほどから徐々に太くなり基部部分では三センチちかくになっている。
 男らは肛門の周囲に注射針で薬液を注入すると、その器具の先端を肛門へと近づけていくのだった。

「ま、まさか……」

 先ほどの注射は弛緩剤だったのだろう。器具の先端は難なく肛門から体内へと入り込み、徐々に胴体部分も飲み込まれていく。

「うぅッ、うぐ――ッ」

 少女らがイヤイヤと首を振ろうとも器具の侵入を止めることなど出来ない。ズルリ、ズルリと着実に入り込み、器具は肛門を抜けてS字結腸を越えると直腸へと進んでいった。

「どうやら二人とも、お尻での歓びを知っているみたいね」

 指摘された通り、ふたりは頬を朱に染めてハァハァと切なげに息を乱していた。 

「うむ……ハァ、ハァ……むぅぅーッ」

 当人が望む望まないは別にして、開発されてしまった肉体は肛門への器具の侵入に反応してしまっているのだ。

「どういうつもりだッ……なにが目的なんだッ」
「まぁ、落ち着きなって、これはスカウトだよ」
「これがか?」
「うちの結社は彼女の能力を高く評価しているらしくってね。機関から離れてフリーになったと聞きつけて是非にスカウトしたいというわけだね」

 どうやら相手は想像しているよりも大きな組織のようだ。
 長らくノノや俺のことを観察していたらしく、これまで身のまわりで起こったことを事細かに語ってみせてきた。

「一応、言っておくけどアンタに危害を加えるつもりはないよ。ただ今までの連中はアンタの存在を軽んじてて足元を掬われていたからね。こうしてアタシが足止めさせて貰っているわけだよ」

 相手の要求はノノにエージェントとしての能力を使って協力を求めるものだった。
 もちろん、それに拒否する権限は与えられず、その為の仕掛けが先ほどの映像で装着させられた器具という訳だ。

「これは簡単にいえば排泄を管理するための弁だね……まぁ、やっぱり実物を見てもらった方が早いだろうね。シスター・シフォン」

 黒人シスターの掛け声に応じて、脇で控えていた美少女のシスターが立ち上がる。
 なぜか白い肌を真っ赤にしながら、こちらをジッと見つめている。

「なにしているの、早くおしよッ」
「うぅぅ…………はい」

 叱責を受けて諦めたのか、裾を掴むとゆっくりと持ち上げはじめた。

「な、な、なにを……」

 黒いストッキングに包まれた細く華奢な脚が現れて、徐々に太ももまであらわになってくる。
 さらに引き上げられて見えてきたのは、ストッキングを吊り上げるベルトだ。
 愛くるしい外観とは違い下着には大人びたガーダーストッキングを着用しているのだ。
 さらに驚かされたのは、ショーツは身につけていなかったことだろう。黄金色の柔毛を生やした肉丘、硬く閉ざされた秘裂までもが目に入ってくる。

「いや、ちょっと待てって」

 慌てて顔を逸したものの、脳裏にはその光景が焼き付いてしまっていた。

「おやまぁ、耳まで真っ赤にして意外にウブだねぇ……まぁ、そんなに照れずにこちらを見てごらんよ」

 黒人のシスターの手によってクルリと身を翻された華奢な身体。ガーダーの黒いベルトが喰い込む染みひとつない綺麗なヒップが俺の方に突き出される。
 その双肉の谷間には、本来なら窄まった肛門があるはずだった。
 だが、そこには直径が三センチはありそうな金属製の筒が挿入されており、蓋で硬く閉じられているのだった。

「あぁぁ……恥ずかしい」

 俺に露出した下半身を突き出した少女は、火でも吹き出しそうなほど赤らめた顔を両手で隠していた。
 だが、命令は絶対なのだろう。決して姿勢を崩そうとはしなかった。

「これが、その排泄管理栓だよ。便宜上、アタシらがそう呼んでるだけで、実際は別の名前があるかもしれないけどね」

 突然、見せられたものに反応に困る俺をよそに、黒人シスターは目の前の実物を見せながら淡々と器具の説明を開始する。
 挿入された器具の大部分は体内に喰い込み、特殊な手段を踏まないと取り外すことはできないらしい。
 それでも無理に外そうと試みたり、激しいショックを与えると器具に仕込まれた爆薬が炸裂する仕掛けになっているそうだ。
 大きさから考えても爆薬の量は少量だろう。だが、それでも肉体に致命的なダメージを与えるには十分だ。
 そして、排泄管理栓と呼ばれるとおり、この器具を装着された者は排泄はおろか放屁すらもできなくなるらしい。

「開けて欲しかったら、いうことを聞けっということか……」

 栓を開けるには電子キーと特殊な器具が必要な仕掛けになっているのだ。それらは、当然のように相手の管理下にあるのだった。

「お前らもノノを好きに使おうというのかよ、ふざけるなッ」
「まぁ、怒るのも当然だね。もちろん拒否する権利は与えられるよ。ただ、あまりオススメはしないけどね。場合によっては、お友達の方も困ることになるよ」
「クッ、人質のつもりかよ……汚い手を使うな」
「多分、そうはならないと思うけど、決めるのは端末であるアタシでなく中枢さ。でも、あんなモノが付いてたんじゃぁ、この先、恋人なんて作れないし、結婚なんてもっと難しいだろうね」

 後半はジョークのつもりなのか白い歯を見せて愉快そうに笑ってみせる。
 もちろん、それに付き合ってやる気分ではなかった。

「まぁ、落ち着きなって、アンタらにも少しはメリットもあるさ。まず第一に絡んでくる小五月蠅い連中は排除されるよ。第二に、対価として金も払われる。下手な企業に就職するよりも高給でね。それに必要な時以外は生活への干渉もないしね。なんなら、悩みがあればアタシが聴くよ? なんたってシスターだからね」

 説明の端々から拾えた情報からも相手組織の力は強く、場合によっては政府機関との繋がりも考えられた。
 それが事実なら警察などには頼れないことになる。長らく監視していたのは事実のようだから、もう相手組織の実力を認めるしかなさそうだ。

「さて、時間のようだね。ウチらはこれでお暇させてもらうよ」

 端末のアラームを聞いて立ち上がると、それまで羞恥に耐えていた少女の方が逃げるようにして玄関から出ていった。

「やれやれ、アンタも落ち着いたら一度訪ねてくるといいさ」

 懐から取り出したカードを俺に手渡すと、戸惑う俺をよそに彼女らは一方的に喋って去っていった。

「……近所の教会かよ」

 カードに記載されていたのは、同じ町内にある教会であった。
 毎日のように使っている通学路に十字架を掲げた建物があるのは認識していたものの、自分には縁がないものだと考えていた。

――ガチャッ

 そうしているうちに玄関の扉が開く音に目を向けると、そこにはシスターと入れ替わるようにして帰宅したノノの姿があった。


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