年下の彼女はツインテール+(プラス)

追撃する彼女はツインテール

 俺は抜けるような青空の下、芝生の上に立っていた。
 周りにはたくさんの料理が載ったテーブルや談笑している大人たち。その間を給仕のスタッフが忙しそうに移動しては、美味しそうな料理を新たに並べていく。
 どうやらガーデンパーティーをしている最中のようだ。

(あぁ、夢……俺の子供の頃の記憶か)

 そう思ったのは俺の背丈が縮んでいたからだ。いつも見下ろしている視界が、今はテーブルの高さよりも低い。まるで巨人の国に迷い込んだようで、なんとなく可笑しな気分にさせられた。
 周囲の人間を注意深く見てみれば、どの大人たちも一様に厳つい顔で、その見馴れた光景からその筋の連中の集まりであるのを理解した。
 その中でひときわ大柄な人物がいたのだが、すぐに俺のオヤジだとわかる。腹を空かせた猛獣のような顔つきは相変わらずだが、今より若々しく、顔の傷もずっと少ない。白スーツの好青年相手に豪快に笑っては、バンバンと肩を叩いて相手を困らせていた。

(また、酔ってやがるな)

 酔っぱらうと力加減が出来なくなるのがオヤジの悪いクセだ。俺は細身な青年の肩が砕けないか、本気で心配になってきた。

(しょうがないなぁ、止めにはいるか)

 そう思って前に踏み出そうとした俺の腕が、グイッと引かれる。振り返れば、頬を膨らませた女の子が立っていた。

「アタシの相手をせずに、どこへ行こうというのッ」

 白いドレス姿のフランス人形のような綺麗な女の子だ。長くて綺麗なブロンズ髪をツインテールにまとめている。そんな可愛らしい容姿なのに、腰に手を当てて仁王立ちしているのだから勿体ない。
 どうやら、目の前の女の子はえらくご立腹な様子だった。その後ろには、同じ年頃の子供たちがいた。

(あぁ、少し思い出してきた)

 オヤジに連れられて、子供の頃に何度かパーティーに参加したことがある。大概は各組織の若手幹部との会合とかって話だったが、これはそのどれかの記憶なんだろう。
 どうして曖昧なのかというと、俺は子供の頃の記憶があまり残ってなかったからだ。なんでも幼い頃に大怪我をして、その後遺症らしいのだが、こうして夢として断片ながら思い出すことがあった。

(確か、この後は……)

 俺の返事も聞かず、女の子は手をひっぱると駆け出していた。慌てて振り向くと、この子にさんざん振り回されたのか、他の子供たちは疲れた様子で手を振って見送っていた。

(押し付けられたみたいだな)

 唯一、ベリーショートカットの女の子がついてきたが、どうにも影の薄い不愛想な子だった。
 俺たちはツインテールの女の子に連れ回されて、会場となっている屋敷中を探索した。なにかおもしろい事を思い付いては行動する彼女のパワフルぶりに、他の連中が脱落した理由がわかった気がした。
 俺はオヤジ譲りの体力でなんとかなったが、もう一人の子は痩せて小柄なくせに表情ひとつ変えずに付いてきていた。

(この子……面白いのかなぁ)

 子供心に思った素朴な疑問だった。密かに観察してみると、常に一定の距離をとって俺とツインテールの子の後を淡々とした様子でついてくるだけで、とても面白いとは思えなかった。だから、俺は立ち止まると、その子に声をかけていた。

「どうせなら、もっとこっちに来て一緒に遊ぼうぜ」

 確かそんな言葉を投げ掛けて、手を差し出した記憶がある。
 その時の驚いた彼女の顔が印象的で、そのあと戸惑って困ってる姿を見て、正直、スゲー可愛いと思ってしまった。

(不愛想でなく、不器用な子だったな)

 ふたりで赤面してモジモジしていると、なぜか機嫌悪そうにツインテールの子が割って入ってきた。だけど、結局、俺たちふたりの手を取って遊んでくれたのだから、あの子も優しい子だったのだと思う。
 ただ、その中でひとつだけ困った事があった。短髪の子がひとことも言葉を発しないからだった。こちらの言葉は理解してたから、言語の問題ではなかったと思う。

「じゃぁ、せめて名前を地面に書いてみなさいよ。いつまでもアンタじゃ、呼びづらいもの」

 そんなツインテールの子の提案に、その子が書いた名前は確か……。



「ヘックションッ!!」

 自分のした豪快なクシャミで、俺は唐突に目覚めた。その途端、ゾクゾクっと寒気に襲われて、ブルブル身体を震わせる。

「うー、さみーッ、あと5分だけ……」

 寝ぼけていた俺は、なんとも間抜けなセリフをはきながら布団を探していた。もちろん布団などあるわけもなく、仰向けのまま身動きが出来ない事を確認するだけだった。

(……あーッ、捕まったんだっけ)

 銀色の金属剥き出しの天井を見上げながら、自分の身に起きたことを思い出していた。
 どうやら移動中のトレーラーのコンテナの中らしく、そこに固定されたストレッチャーの上に寝かせられて、いくつものベルトで固定されていた。
 周囲には、頭から爪先まで黒づくめのガスマスクの連中が慌ただしく動いていて、殺気だってる様子がヒシヒシと伝わってくる。

(うん、それはわかる)

 どうやら追撃を受けているようだ。時折、コンテナがガンガンと派手な音を立てたり、銃声や剣撃の音が聴こえてきていたからだ。
 恐らくノノかブレダ、もしくはそのふたりが来ているだろう。どれくらい時間が経過しているのかはわからないが、素早い行動は流石というべきだろうか。

(まぁ、それも理解できる)

 だが、横たわる俺の身体からは衣服が全て脱がされ、さらにはその上に股がる人物がお尻を向けて、俺の局部をまさぐっている状況には理解に苦しんだ。

「……緊迫した状況に、テメェはなにをしてやがるッ」

 思わずツッコミを入れずにはいられなかった。
 俺の声に振り向いたその人物は、他の連中と同様に黒づくめのガスマスク姿であったが、ピッチリと肌に張り付くようなボディスーツが女性らしいラインを浮き出させていた。特にその胸元は圧巻で、細身な体躯に似合わぬ殺人的なボリューム感に、思わず俺も言葉をとめてゴクリと生唾を飲み込んでしまった。
 そんな女が、俺のそそり勃ったものをシゴキながら、シュコー、シュコーとやや息を荒らげた呼吸音を立てて、不思議そうに小首を傾げているのだ。

「わけわからんッ!! それより……気持ち良すぎるから……それ、止めてくれ」

 女はローションをまぶしたラバーぽい手袋で、俺のものを包み込むようにして上下にシゴいていた。
 ヌルヌルした独特の感触と女性らしい細い指が絡みついて俺のを握っていることに、どうしても興奮してしまう。正直、下半身に血がいきすぎて、頭がクラクラするぐらいの気持ち良さだ。
 そんな反応を楽しんでいるのか、女は俺の顔をうかがいながら、手の動きを変えては刺激する場所を変えてくる。

(うぅ……やべぇ、イっちまいそうだ)

 初めてのローションプレイと黒いボディスーツが浮き出す女体のエロさが加わり、俺は早々に絶頂を迎えさせられそうになる。
 だが、その寸前でピタリと刺激が止んでしまう。代わりに小さなベルトのようなモノが根元にはめらて、キュッと絞られてしまった。
 そして、女は何事もなかったかのようにシゴキだして、再び刺激を与えてくるのだった。

「なッ!? まさか生殺しかよッ」

 ベルトによって射精できない俺はイクにイケない状態を繰り返され、流石に弱音を吐きそうになる。
 だが、それを言ったが最後、どんな要求がくるかわかったものではない。助けにきているふたりを信じ、俺は必死に堪えてみせた。
 すると今度は、何を思ったのかローションのボトルを取り出すと自らの身体にかけはじめた。その状態で俺の身体に寄り添うようにピタリと張り付く。

(あッ、これはヤベぇ)

 密着度を増した黒い女体が、俺の身体に張り付いたままゆっくり前後に移動する。
 ただ、それだけのはずなのに、皮膚を刺激されゾクゾクする快感に俺は襲われていた。ご丁寧に股で俺の男根を挟み、指先で俺の乳首を摘まんで刺激するオマケつきで、思わず気持良すぎて、気味の悪い喘ぎ声をあげそうになっていた。

(ぐぅぅッ……くそーッ)

 それでも無様な醜態を晒したくない一心で、俺は自分を鼓舞してなんとか耐えきってみせた。
 数々の責めに耐え切った俺は、ローションと汗にまみれながら不敵に笑ってみせた。

「ど、どうだ、耐えきったぜッ」

 その態度が気に入らなかったのだろう、目の前の女がムッとしたように感じられた。
 おもむろに俺の男根にはめたベルトを外すと、スーツの股間部分に手を伸ばしてファスナーをゆっくりと下げ始めた。
 黒いスーツの股が、パックリと割れていく。徐々に透き通るような白い肌と赤い柔毛が露になり、ついには綺麗なピンク色の秘裂までもが姿を現した。
 思わず凝視して生唾を飲み込んでしまっていた俺だが、ハッと我に返る。
 これから起こるであろう先の展開を予想して、顔を強張らせた。

「いや、ちょっと待てッ!! もしかして俺は……今から犯されるのか?」

 俺の問いにガスマスクの頭部がコクコクと縦に振られた。正直、今までの行為も十分に凌辱行為なんだが、それでも、よくわからん奴にこの先をされるのは嫌だった。
 それに、そんな事になったらいろいろマズい事になると、俺の理性も警告していた。
 思わず見つめ合ったまま、ふたりの間に気まずい沈黙が流れていく。

「……………………えーと……」

 俺から問いが、それ以上ないと判断したらしい。
 女は男根に指を添えて垂直に立たせると、その上に股がろうと動き出した。

「いや、いや、ちょっと待てってッ」

 必死に呼び止めに、再びピタリと動作が止まる。既に亀頭の尖端が肉襞のクレパスに触れる寸前だ。
 ガスマスクで表情は読めないが、どうやら相手が不機嫌になってきてるのが雰囲気でわかった。
 まだ、なにかあるのかとズイッと顔がこちらに突きだされ、分厚いレンズ越しにクリクリとした大きな瞳と目が合った。キラキラと眩いばかりの綺麗な翠色の瞳にジッと見つめられて、こんな状況でありながら俺はドギマギとさせられてしまった。

「えーと、あれだ……そうッ、こういうのは、順番というものがあってだな……」

 説得を始めた俺の言葉に当初は首を傾げていた女だったが、なにか合点がいったのだろう。突然、ガスマスクを脱ぎ捨てた。
 そこに現れたのは、意外にも同い年ぐらいの幼さが残る少女の顔だった。透き通るような白い肌と、肩まであるウルフカットの赤髪、そして人懐こそうな眼差しを向けてくるグリーンの瞳が印象的な子だ。
 ニッと笑って犬歯を見せる姿から、なんとなく尻尾を振って寄ってくる犬を連想したのだが、今までの展開からしてこの子もまた、ただ犬ではなく狩猟犬なんだろうとは想像がつく。
 そう思っていると、おもむろに俺の顔を両手で挟み、その柔らかな唇を重ねてきたのだ。

(――なッ!?)

 驚く俺の隙をついて、少女の舌先が口の中へと侵入してくる。それを噛みきるわけにもいかず、ただ受け入れるしかなかった。




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