虹色の清掃人

「このような契約は明らかに違法です。ただちに契約解除に同意してください。さもなければ、週明け早々に法的手続きに入りますが、宜しいですか?」

 その女弁護士は、金曜日の昼に突然事務所に来訪すると出迎えた社長に向かって冷ややかな目で見下ろし、そう言い放った。
 彼女は、20代後半だろうか、肩まである明るい栗色の髪にソバージュをかけ、気の強そうな切れ長の目、どこか気品を感じさせる鼻梁と、キュッとしまった口元から、知的でクールな雰囲気を漂わせるような女性だ。
 女性にしては長身で、モデルのように無駄のないプロポーションを誇る身体を紺のスーツでビシッと固めているが、スーツ越しでも、その官能的ですらあるボディーラインは見て取れる。
 そんな女弁護士が、ピンと背筋を伸ばし、綺麗に美脚を揃えた状態でソファに座り、理路整然と社長に抗議しており、その背後では、護衛も兼ねているのだろう屈強なスーツ姿の男が、胸を反らし不動の体勢で立ち、社長に無言の威圧を放っているのだった。

「まぁまぁ、まずは落ち着いて話し合いましょう、東雲先生」

 そんな剣幕や脅しには慣れているのだろう。対する社長は動じる様子もなく、小太りな小柄な体躯を愛用の上等な外国産のスーツで包み、いつも絶やさない人懐っこい笑顔で対応していた。
 こちらは、目の前の美女と対照的に、その体型と目の下の隈から、どこか狸のような印象をうける姿から、愛嬌すら感じてしまう人物であった。
 2人は、そんなやり取りを繰り返し、一方的に要件を言い終えた女弁護士が「月曜日までが期限ですからね!!」と扉を開けて荒々しく出て行くのだが、それを私は応接室に設置した小型カメラを通し、ジッと観察していた。



「やれやれ、参りましたよ」

 社長は、自分のデスクへと戻ってくると、愛用の黒革張りの椅子へと疲れたように小柄な身体を埋め、バーコード状になっている頭を掻きながら待機していた私に向かって苦笑いを浮かべた。
 そんな彼だが、私の指示で彼の秘書に煎れさせた好みのコーヒーをタイミングよく差し出すと、目を細めて香りを嬉しそうに楽しみ、美味しそうに口にする。
 そうして社長が一息付くのを見計らうと、私は先ほどのやり取りに関して率直な彼の感想を詳しく聞いていくのだった。

 いろいろとボヤき始めた社長の話に相槌を打ちながら、私は頭に叩き込んでおいた先ほどの女弁護士に関する情報を引き出していた。
 先ほどの女弁護士の名は、東雲 樹里華(しののめ きりか)。この会社との契約に不満のある顧客を集め、一斉に契約の解除を求めてきたのだった。
 彼女は、若手でありながら、今、もっともやり手であると評判の弁護士であり、元検事である父親が経営する大手弁護士事務所に所属していて、そこの力をフルに使い、弱者救済の名の元に様々な成果を上げていた。
 それが評判になり、最近では、その美貌とプロポーションからマスコミにも取り上げられる事も多くなり、いくつものテレビ番組のコメンテーターとして出演しているほどで、”弱き者を助ける、正義の美人弁護士”というマスコミの宣伝効果も合わさって、ますます彼女の世間へと与える影響力は強まり、勢いづいてきていた。
 そして、そんな彼女の成果が高まるに比例して、私の顧客たちがどんどんと餌食になっていっているのが今の状況であった。

「で……どうなんです? こんな時のトラブル対策の為に、”掃除屋”である七虹(ななこ)さん、アナタに高い金を払っているんだが……」

 苛立ちつつも、どこか恐る恐るといった風で尋ねてくる社長に、私はジッと彼の瞳を見つめると、了承の意味を込めてしっかりと頷いた。
 それを見た途端、社長の表情がパッと輝き、ニコニコと微笑みながら「これで安泰だ」とウンウンと嬉しそうに何度も頷くのだった。
 
―― この社長に限らず、被害にあった各クライアントの方々も、そろそろ痺れを切らし始める頃だろう…… ――

 私は思案しながら、先ほどまで記録していた映像ファイルをディスクに移しかえ、それを懐に収めた。

―― これで私の準備もほぼ整った、そろそろ仕事に取り掛かるとしようか…… ――
 
 これから始める仕事内容を思い浮かべ、おもわず口元に笑みを浮かべてしまっていたのだが、そんな私の顔を見て、正面に座っていた社長がビクッと肩を震わせ、笑顔を強張らせた。

―― 皆、私のこの営業顔での笑顔を見ると、いつも彼と同じ反応をする ――

 包帯で包まれた自らの顔を撫でながら苦笑いを浮かべると、私はその会社を後にした。
 
 
 
 午前0時を迎えようかという深夜、高級マンションの前に、黒塗りのベンツが静かに停止した。
 その運転席からガッシリした体躯の男が降り立つと、いそいそと後部ドアを開ける。すると、そのドアの隙間から、スラリとした美脚がアスファルトの上に降ろされ、東雲 樹里華が姿を現せた。
 彼女は優雅な動作で車から降りると、恭しく頭を下げる男に片手を上げ応えて、カツカツと小気味良い足音を立てながら、自宅である高級マンションへと入っていく。
 その様子を私はモニター越しに確認すると、彼女を出迎える為の準備を開始した。
 しばらくすると、最上階であるこの部屋の玄関が開かれ、それに呼応して室内の照明が自動的に点灯していく。そして、40畳はあるこのリビングへの扉が開き、上着を脱ぎすっかりリラックスした様子の彼女が入ってきた。
 まったく警戒してなかったのだろう。リビングの中央に座る私を見ても、最初、彼女は怪訝な顔をするだけで、すぐに反応しなかった。だが。徐々に私の姿を理解し、不審者の存在を認識すると、顔を強張らせ、咄嗟に悲鳴を放とうとした。

「ヒッ……うぐッ! うむぅぅぅッ!!」
 
 そんな彼女の口を、リビングの入口の影に潜んでいた、私の優秀な3人のアシスタントたちが素早く塞いだ。厚い皮の手袋で塞がれた下で、彼女はくごもった悲鳴を放ち、すぐさまその手を振り払おうと暴れ始めた。
 だが、口元を覆う手を引き剥がそうとした彼女の両手も、すかさず左右からガッシリと掴まれ封じられ、そのまま背後へと捻り回された。もちろん彼女は振り払おうと必死に抵抗するのだが、アシスタントたちは手慣れた動作で、肘の関節を決めて、その抵抗を無力化してしまう。
 背後で合わせられた両手首に黒革の手枷を巻き付き、ベルトがギチギチと音を立てながら締め付けられ、ガッチリと拘束されていく。そして、その手枷から伸びている十字の革ベルトの先にある2つの枷を二の腕に、残る首輪を、細い彼女の首へと次々と無駄のない動きで2人のアシスタントが嵌めていった。
 それを確認すると、口元を押さえていたアシスタントがその手を離し、次に彼女の顎をガッシリと掴んだ。
 
「た、たす……あッ……あがぁ……うぐぅぅッ!」

 顎を掴んだ指で更に頬を左右から強く押し込み、無理やり彼女の口を開かせると、フェイスクラッチマスクの金属筒を押し込み噛ませる。その左右から伸びるベルトを後頭部でギュッと締め付け、残る縦のハーネスを彼女のツンとした高い鼻の左右を通して眉間に這わせると、それも後頭部で結わいつけた。
 顎が外れんばかりに、美唇を裂き噛まされた金属筒、その穴からは彼女のピンク色の口腔がヌラヌラと濡れ光り、妖しく蠢くのが見えた。そして、必死に縮められていた舌が、徐々に突き出されていった。
 これで、彼女は両腕の自由が奪われ、言葉を自由に喋る自由も封じられてしまった訳だ。だが、不意打ちによる混乱から脱してきたのだろう、そんな状態でも、彼女は眉を吊り上げ、ギッとアシスタントたちを睨みつけた。
 そんな彼女の態度に、私のアシスタントをしている彼らが動じる訳もなく、手の動きを止めずに淡々と作業を進めていく。
 アシスタントの1人が彼女の高級そうな生地の白いブラウスの胸元を掴むと、強引に左右に引っ張った。ビリっという裂ける音と共に、白くまばゆい肌と、ナイロンの光沢が輝くライトブルーのブラが露出する。そのブラのストラップをもう1人のアシスタントがナイフを取り出し、素早く切断すると、その途端、張りのある美麗な乳房が勢いよく飛び出してきた。
 
「ヒッ……ひやッ!」

 羞恥で顔を朱に染め、口枷を噛まされた口で呻きながら、イヤイヤと身体を左右に捻ると、美乳がなんとも悩ましく揺れる。そんな彼女の羞恥を煽るかのように、ブラウスにもナイフの刃が次々と入り、切り刻んでいった。
 それと同時に、スカートのファスナーも降ろされ、ストッキングの下のブラと同色のローライズショーツが露わになっていく。そして、ストッキングも派手な音を立てながら次々と引き裂かれ、ショーツのサイドにも、無情にもナイフの刃が当てられると、流石の彼女の目尻にも涙が浮かび、口枷の下で必死に呻いた。
 だが、ナイフの刃は迷うことなく、ショーツを切り裂き、ただの布切れと化していった。
 そうして彼女を全裸にすると、今度は首輪の前から垂れ下がる革ベルトを、アシスタントたちは彼女の胸に巻き付けていく。十字になった部分を胸元に押しつけ、そこから左右に伸びたベルトを二の腕の枷に通し締め付ける。更に、胸下まで垂れて左右に別れたベルトも乳房の下を通し、上下の革ベルトで乳房を挟み込むようにギチギチと締め付けていった。

「ひゃ……ひゃへ……ひゃめなひゃいッ!!」
 
 彼女の乳房が、革ベルトによって根元から無理やり絞り出されていく。その感触に彼女は必死に身体を揺すり、嫌悪の声を上げた。
 アシスタントたちは必死に暴れる彼女を無理やり跪かせると、顔を床に押し付けるような前屈みの格好に押さえつけた。
 彼女が全裸に剥かれ、黒革の拘束具で全身を戒められ、床を舐めんばかりの屈辱的なポーズを取らされるまで、ソファに座り、ジッと観察していた私だが、アシスタントたちの作業が終了したのを確認すると、ゆっくりと立ち上がり、彼女の前へと歩み寄った。
 そして、彼女の前に立って見下ろすと、私の顔を覆う包帯をゆっくりと解きほどき、裸体の上から羽織っていたコートを脱ぎすてた。

「いい姿ね、東雲 樹里華さん」

 露わになった私の姿とその声に、目の前で跪かされている彼女は驚きで目を大きく見開いた。それはそうだろう、自分と瓜二つの姿形をした全裸の女性が、まったく同じ声で話し掛けてきたのだから。
 その彼女の反応に、自分の仕事の出来を再確認し、私はニッコリと微笑んだ。その微笑みも、彼女が気を許した仲間に対してのみ見せる魅力的な笑みだった。
 
「あぁ、東雲 樹里華は、もう私ですものね。貴女は今からただの牝豚ちゃんだったわ」

 私が彼女にそう言い放つと、その背後にいた私のアシスタントが、彼女の惚れ惚れする高い鼻梁、その両穴にフックを掛けベルトを引き上げる。その途端、彼女の気高い美貌が、豚鼻状態にされた。

「ぷッ、くッ、ふふふ……よくお似合いよ」
 
 無残な彼女の顔に思わず口元が緩む。そんな私を彼女は涙を浮かべながらも気丈にも睨み返してきた。
 
「いいわぁ、いいわねぇ……そう、こなくっちゃ」
 
 彼女の態度にゾクゾクっと身体を震わせ、私は嬉しさのあまり足元にある彼女の顔を素足で踏みつけた。そしてグリグリと足を捻り、その感触を楽しんだ。
 
「グッ、ひゃ、ひゃめ……ひゃめな……」

 屈辱に顔を真っ赤にさせ呻く彼女。そんな彼女に自分の姿を見せてあげたくって、私はアシスタントの1人に、別室から全身が映る姿見の鏡を持ってこさせた。

「……ッ! ひッ、ひやッ!!」
「ふふふ、ホントお似合いよ、牝豚ちゃん」

 全裸の奴隷姿で床に這いつくばらされ、顔面を踏みつけられる豚鼻姿の自分……容姿に自信を持ちプライドも高い彼女にとっては、その姿はあまりにも屈辱的だったのだろう。整った細い眉毛をキュッとハの字に歪め、澄んだ瞳から涙をポロポロとこぼし始めた。
 
「まぁ、後の事は私に任せて、これからは安心して牝豚修行に励んでね。私のクライアントたちが、それこそ存分に可愛がって下さるわよ」

 そんな彼女に、私はこれからの予定を説明してあげた。

「明日から、私が貴女の身辺を整理していきますね。それが終われば、貴女は謎の失踪……『美人弁護士なぞの失踪』『明かされる美人弁護士の乱れた淫行』などなど、マスコミにはいろいろ話題を提供して差し上げる予定ですから、さぞかし貴女のお父様も嘆かれる事でしょうねぇ」
 
 私の説明が進むにつれ、彼女の表情が強張っていくのがわかった。でも、簡単にその心が折れてしまってはつまらない……。
 
「でも、ひとつ、貴女に約束しますね。もし、その間に誰か1人でも私の事を不審に思う者が現れたら、その時は貴女を解放して上げますね。まぁ、信用して……というのは難しいでしょうけど、約束は必ず守るのが私の信条ですから」

 その言葉を聞いた途端、彼女の表情に変化が生じた。”どこかで化けの皮が剥がれるに違いない”そう考えてるのが、彼女を観察し尽くし隅々まで理解している私にはよくわかった。
 
―― 今まで誰にも気が付かれた事はないのだけどね ――

 最後の言葉は声には出さず、私はただニッコリと彼女に微笑んだ。
 そうして、私と彼女の会話が終えるのを確認すると、アシスタントの1人が別室に置いておいた大型のトランクを運んできた。
 残りの2人が彼女のスラリとした両足を無理やり折り畳み、膝が乳房の両脇にくるぐらいにM字開脚で小さくまとめあげると、幅広の革ベルトで彼女を肉達磨のごとく更に拘束していく。
 そうして、彼らは首から下はまったくの自由が利かなくなった彼女を抱えあげると、パックリと口を開いたトランクの中へと押し込んでいった。
 
「じゃぁ、飼い主のクライアント様たちに、たーんと可愛がって貰うのよ」
「うぅ……い、いひゃ……た、たしゅ……」

 徐々に閉じられていくトランクの隙間から、涙目でイヤイヤと首を振り呻き続ける彼女に、私は微笑みながら手を振るのだが、パタンとトランクが閉じられると、そんな彼女の呻きも完全に聴こえなくなった。
 その光景に満足げな笑みを浮かべ全裸で立つ私に、アシスタントたちは一礼すると、そのトランクを軽々と担ぎ上げ、外へと運んでいく。
 そんな彼らを見送ると、しばしの自宅となるこの部屋を堪能するべく、私は書斎へと向かうのであった。



「はい……はい……えぇ……満足頂けているようで、何よりですわ」

 私は携帯電話で上機嫌な狸社長の声を聴きながら、手に持ったタブレットの画像を楽しんでいた。
 そこには、何人ものクライアントたちに凌辱されている、かつて東雲 樹里華と呼ばれていた女の姿が映し出されていた。
 
―― 動物のように肘と膝で四つん這いになるように四肢を折り畳まれ、これでもかと無数の黒革の拘束具で厳重に戒められ ――

―― 大量の浣腸液を次々とアナルから注ぎ込まれて、拘束具できつく戒められているはずの腹部は、まるで妊婦のように膨れ上がり ――

―― 拘束ベルトで根元から絞り出された乳房には、無数の歯形が付けられており、その先端で尖る乳首には、銀色のリングピアスが付けられ、吊り下げられた錘で、無残にも伸びきっていた ――
 
―― そんな彼女の背後には男がのしかかり、無残に鞭打たれた、無数の赤い跡が残る尻肉を抱えるようにして、彼女のアナルを犯し ――

―― そして、彼女の下に潜り込むように横たわった男が、それに合わせるように荒々しく彼女の秘肉に怒張を突き上げている ――

―― かつて気高さを漂わせていた彼女の美貌は、鼻フックによって無様な豚鼻にされ、その鼻穴には、家畜の様な銀色の鼻輪が非情にも付けられていた  ――

―― 更に、数々の悪を両断する言葉を放っていた口元には、3人目の男のどす黒い怒張が押し込まれ、髪を鷲掴みにされて荒々しく喉奥を犯され続けている  ――

―― そうして、彼女に恨みを持つクライアントたちによって、穴という穴から体液を垂れ流させられながら、彼女は白目を剥いて悶絶しており ――

―― そんな彼女らの周囲には、出番を今か今かと待ち構えている男たちで、いっぱいだった ――

 そんな無残な牝豚となった彼女の姿に、私は口元を綻ばせた。
 
「あらあら、大人気ですねぇ。他のクライアントの方々も大満足のようで、ホント、良かったですわ」

――トントンッ

「東雲さん、本番いきまーす」

 控室の扉がノックされ、ドア越しにADの声が掛かった。
 私はすぐに返事すると、素早く鏡で容姿の確認をして、収録スタジオへと向かう。
 
「次の依頼も来てることだし、この生活もちょっと勿体ないけど、さっさと終わらせないとね」

 そして、次の掃除物の情報を脳裏に思い浮かべ、私は口元に妖艶な笑みを浮かべるのであった。



―― END ――




もし、読まれてお気に召しましたら
よかったら”拍手ボタン”を
押して下さいませ。


web拍手 by FC2

l>