ソール・トレーダー (Sole Trader) Second Day  ― とある営業マンの一日 ―

 年明け早々に私は冬の軽井沢に来ていた。
 目的は顧客であるお医者様が主催する仲間内の新年パーティーに参加するため。もちろんそれは仕事でだった。
 私の仕事はいうなればトレーダーで、ある商品を専門にする取引業者だ。
 より良い品を入手してお客様に満足して買っていただく。ごく当たり前のことをしているのだけど、弱小個人経営の身では、いかにリピーターを増やし、顧客の新規開拓するかは重要なことだった。
 パーティーの主催者である守野様には、随分と贔屓にしてもらっており、今回も参加する同好の仲間たちを紹介してもらえる機会をいただいていた。
 それぞれ開業医として成功されている方々ばかりで、私の商品に興味を持っていただけているということだった。
 ただ、全員が三十代と若く、その多くが本格的な飼育が未経験とのことで、当人達が望むのならば躾のコツなどもレクチャーして欲しいという要望を受けていた。
 パーティー会場となるのは近代的な建築の別荘。都内の大学病院で医局長をされてる方なだけあって、建物は客間がいくつもある大きさで、招待された六名の参加者に割り振るだけはある。
 そこで私はあることを提案してみることにした。



 パーティーが始まり、約束通りひとりひとり紹介していただき、名刺交換する。ワイン片手に談笑をしつつ、それぞれの方の嗜好やこだわりを聞いては脳裏に記憶していった。
 一概に商品の購入といっても顔立ちや胸の大きさなど容姿だけでも細かい好みがある。それに加えて、飼育方法でも放し飼いか室内飼育か、飼える数は単体か複数かなど、お客様の希望と予算で提案する最適プランは変わっていく。
 参加者全員との挨拶が終わると、ひとまず主催者である守野様と二人きりになった。
 守野様は、いつも通りにニコニコと笑顔を浮かべて、物腰の低い感じで接してくれる。

「どうですか、うまく商談に結び付きそうですかな?」
「はい、皆様、ご興味はあるのですが、金額のお話を聞いて迷われるようですね」

 私の主な顧客は中堅の裕福層が多いため、私の商品は彼らにとっては決して安いとはいえない品となる。

『無理のない範囲で、その方の期待度を越える満足を提供する』

 それが私がこの仕事をはじめてから一貫してるポリシーだった。なので無理強いして購入していただこうとは考えてはいなかった。
 先ほどまで収集していた情報を整理して問題がないことを確認した私は、守野様に提案していたことを実行することにした。

「さて、今年はパーティーに参加の皆さんに楽しんで頂こうと、先ほどご紹介した藍川さんからの提案で少し変わった催しを準備してみました」

 事前の打ち合わせ通りに守野様のアナウンスに合わせて、私はパーティー会場と隣の部屋を仕切っていたカーテンを開いていく。
 そこにはサンタクロースが担ぐのに似合いそうな中身の詰まった七つの大きな白い袋が並んでいた。

「私、藍川から皆様へ、ささやかですが福袋をご用意させて頂きました」

 興味深そうに袋の前に集まった参加者に一礼すると進行役を代わり、催しを説明していく。

「中身は私のお仕事をご存じの皆様なら容易にご想像できると思います。福袋の上からなら触っても構いませんので、どうぞ順番にお選び下さい」

 そう告げてニッコリと微笑むと、趣旨を理解した参加者の皆様は興奮した様子で、目に見えて張り切りだした。
 まるで子供に戻ったように真剣にジャンケンをし、勝った順番で袋をひとつひとつ触って確認していく。
 その感触が期待通りのモノだったらしく、全員が触れながら鼻息を荒くしていった。

「さて、皆様それぞれお好みの福袋をお決めになりましたので、一斉に中身を出してみましょう」

 私の合図とともに一斉に福袋の口がほどかれ、中に詰められていた品がゴロンと絨毯の上に転がりだす。それは黒革の拘束具によって厳重にいましめられた牝奴隷たちだった。
 どれもハッと息をのむような選りすぐりの美女ばかりで、素人でも一級品だとわかるモノだ。
 それに加えてて今回は少し趣を変えてみていた。それぞれに自分の職場での服装をさせているのが大きな違いだった。
 婦人警官、フライトアテンダント、レースクイーン、女弁護士、社長秘書、ニュースキャスター、女教師とAVタイトルで好まれそうな職業の牝ばかりを選んである。
 そんな牝たちの同性から見ても惚れぼれする見事なプロポーション。そこに亀甲状に組まれた黒いハーネスが絡みつき、乳房を絞り出し、細腰をこれでもかと締め付けている。
 両腕はアームバインダーと呼ばれる袋状の拘束具に揃えた状態で押し込まれ、スラリと長い美脚は折り畳まれ、M字になるよう太ももと脛に巻きついた幅広いベルトで固定されていた。
 奴隷の証である首輪に繋がれたプレートには、それぞれの個人情報が詳細に記載されていて、実際にその職業で働いているのが写真入りで確認できるようにしていた。
 こういう職業フェチもまた好む方々が多いのは経験済みで、より興奮を高めてもらえるスパイスなのもよく知っていた。
 その効果はてきめんで、参加者全員が興奮で目を血走らせて股間を大きく膨らませていた。

「試用としてご用意しました牝奴隷たちはアナルまで調教済みですので、滞在中は思う存分にお楽しみ下さい。お道具も客間の方に用意させて頂きました。春に販売予定の新製品もございますので、そちらもぜひご試用ください」

 私の言葉に喝采をあげた参加者の皆様は、それまでの紳士らしからぬ残忍な笑みを浮かべる。我先へと引き当てた商品を担いで客間へと飛び込んでいくと、パーティー会場に残ったのは私と守野様だけになっていた。

「どうやら喜んで頂けたようですね」
「そりゃ、こんな一級品の牝奴隷を好きにできるなんて、まだ経験浅い彼らからしたら夢のようですよ。車で例えるなら量産品の一般大衆車から職人手作りなフェラーリに乗るようなものですからね」

 そう語る守野様も興奮を抑えきれない様子で、足元に転がるニュースキャスターを踏みつけて感触を楽しんでいるのだった。
 ニュースからバラエティーと幅広い番組に出演していた人気の元局アナで、有名私立大大学の法学部をでた才媛らしいクールな眼差しと、モデル並のプロポーションのEカップボディで男性層からの人気が特に高い。
 昨年からはフリーとなって看板ニュース番組のキャスターを勤めて視聴率も好調だという。
 その裏ではテレビ局の重役によって新人時代に犯され、番組出演中もバイブレータ入りの貞操帯を常に着用させられて日々、牝奴隷として調教されていたという。
 今は守野様に拘束具に絞り出された豊乳を踏みつけられ、ボールギャグを噛まされ口元からだらしなく唾液を垂らしている牝奴隷。切なげに涙目で私を見上げるのを一瞥して、懐から電卓を取り出す。

「そうですね、これぐらいでしょうか」

 電卓を軽快にタッチして希望価格を提示する。そこに表示された数字を目にして守野様は驚きを顕にした。
 それはそうだろう。彼が予測したであろう半分以下の値にしていた。
 その期待通りの反応に、つい内心で悪戯っ子のような笑みを浮かべてしまう。

「どうして、こんな価格で……」
「それはですね……」

 今回用意したのは、顧客の中でもお得意様の方々が自ら調教して育てあげられた牝たちだった。
 そんな方々も不意の病に倒れられて身辺整理を始めたり、景気の影響で本業が芳しくなく新しい牝を入手する予算が目減りして困ってる場合などがある。
 私はアフターサービスとして奴隷や設備の痕跡を消すお手伝いや下取りもしていた。
 足元に転がるニュースキャスターも飼い主であった重役が調教中に心臓麻痺心で急死していた。その死後、自分の調教記録を人知れず処分して自由になれたと思ったのだろう。フリーに転向して心機一転しようとする前に、私が現れた。
 重役は私の顧客であり、心臓に持病を持っていた彼から死後の処分のことを頼まれていたからだった。その中には牝奴隷であったニュースキャスターも含まれ、こうして故人の依頼に従い、新たな牝奴隷としての生活を与えていた。
 今日、用意した牝奴隷たちは、いうなれば中古品で訳あり商品なのだった。
 それでも一級品なのは変わらず、こうして購入にお悩みのお客様に実際に高級品に触れていただき、その価値に見合う良さを知っていただいていた。
 だた、人によっては一から奴隷に育てあげたいという拘りのある方もいるので、それは事前にいないのを確認済みだった。

「まずは私の扱う商品の良さを知っていただき、納得の上でご購入していただきたいのです。ですので守野様もお悩みなどありましたら、お気軽にご相談ください」

 ニッコリと微笑むと守野様にも一級品の牝奴隷を堪能していただく為に寝室へとお送りして、私は別荘を後にした。
 後日、皆様は手に入れた牝奴隷を交換してみたりと充分に堪能された様子で、連絡を頂いて再訪すると満足そうな笑顔で出迎えていただけた。
 もちろん全員に牝奴隷をご購入いただき、その他にも調教道具や檻など飼うために必要な設備工事の契約までできて、お互いに満足する結果におさまった。

「うん、幸先良いはじまりだわ。今年もジャンジャン稼ぐわよ」

 高速道路を疾走するベンツの中、私はジャズの音色に上機嫌に鼻歌をあわせながら、次の顧客の元へと向かうのだった。




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