Express Package Service ―とある女の甘い囁き―

――なんか面白そう

 灰獲 遊大(はいどり ゆうた)が持ちかけてきた話を聞いて、風見 夢利(かざみ ゆうり)が最初に感じたのがそれだった。
 当人は誤魔化しているつもりのようだったが、夢利には彼が何をやろうとしているのかすぐにわかった。

――上司である鹿目 桃花(かしま ももか)を罠に嵌めて、マゾ奴隷に調教する。

 それだけわかれば十分だった。彼女は口元を綻ばせると、次にはこう言っていた。

「それ、面白そうだから、アタシも混ぜてよ」

 まるで子供が友達の遊びの輪に混ざるかのような気軽さで、その悪事へと首を突っ込むのだった。



 夢利は、幼い頃から物事の結果にこだわらない性格だった。

――どうすれば、今をより楽しめるか

 ただ、それだけが彼女が行動を決める際の基準であり、その後に付いてくる結果はオマケでしかない。
 そこに善悪の分別もなく、後先も深くは考えていない。だから、これまでもギャンブルやドラッグにアブノーマルなセックスと、興味を引くことには、なんにでも手を出してきた。
 自ずと同じ場所、同じ仕事には落ち着くこともなく、根なし草のような生活をしている彼女だ。
 自由奔放、考えなし、刹那的と人によって捉え方も変わる夢利の行動だが、不思議なことにしがらみの多い身分が高い者ほど彼女の自由さが魅力的に見えるらしい。
 さまざまな土地で、いろんな仕事をこなすうちに、そういう者たちとの縁だけが残っていき、今の会社に入ったのも六本木のSMクラブで女王様をしていた時に、お得意様だった会長の誘いがあったからだった。

(でも、そろそろ飽きてきたかなぁ……)

 一通りの仕事をこなしてみて、出会った目ぼしい男女も食い尽くしていた。
 次はどうしようか悩んでいた矢先、転がり込んできたのが灰獲の話だった。

(ガードが硬くて諦めていた桃花ちゃん、それに亜紗子ちゃんまで狙ってるのね、うふッ、あのふたりでSMを楽しめるチャンスなんて絶対見逃せないじゃないッ)

 今の会社を立ち去ることに心残りがあるとすれば、そのふたりの存在だった。
 取材先で知り合った芸能人たちにも負けぬ美貌を持つ桃花と亜紗子。当然、夢利のターゲットリストのトップにも入っており、同じ部署に所属している利点を利用して、ずっとチャンスをうかがっていた。
 だが、ふたりとも予想以上にガードが硬く、今まで墜とせずにいたのだった。

(チャンスをくれた遊大クンには、感謝しないとね)

 そうして、積極的に灰獲の悪事へと荷担していった夢利は、今の状況を最大限に楽しんでいた。



 その夜、調教部屋へと改造された寝室で、桃花は夢利に責められていた。
 足場用のパイプを組んで作られた梁の下で、後ろ手に緊縛された全裸の桃花がM字開脚の姿勢で吊られている。
 幾重にも巻き付いた麻縄が柔肌に食い込み、無惨に変形させられた女体。その麻縄でくびりだされた乳房を背後から揉みたてながら、夢利は腰に装着したディルドウで桃花のアナルを犯していた。

「ぐふぅぅッ、あッ、あぁン」
「うふ、アナルを犯されて悶え啼く桃花って可愛いわぁ、もっともっとイイ声で啼かせてあげたくなっちゃう」

 アナルから一度ディルドウを引き抜くと、手にしたボトルから薄ピンク色の妖しげな粘液を塗り付けていく。
 そして、ペロリと唇を舐めあげた夢利は、再び直腸深くまで突き上げるのだった。

「ぐひぃぃッ、ひッ、ひぃぐぅぅッ」

 激しく突き上げられるたびに、涎を垂れ流しながら狂ったように悶え啼く桃花。
 緊縛されて吊られる女体が揺れるたびに、吊り上げる麻縄がギシギシと軋んだ音を響かせた。

「まったく、容赦ないなぁ」

 接待のために深夜近くに遅れてやって来た灰獲は、陰惨な室内の様子に苦笑いを浮かべた。
 足元には様々な責め具がところ狭しと転がっており、空になった浣腸器や汚物の溜まったバケツ、体液で濡れ汚れたアナルバイブなどのアナル調教用の道具が多くを占めていた。憔悴した様子の桃花からも責めの熾烈さが容易に伺える。
 だが、苦笑いを浮かべつつも灰獲に止める気などなかった。
 それどころかアナルを責められて悶え啼く桃花の姿に激しく興奮すると、いそいそと服を脱ぎ捨てて一緒に責め始めるのだった。
 その股間では、はち切れんばかりに膨張した男根が、臍につかんばかりのそそり立っていた。

「ふふ、今夜も元気ね」
「あぁ、仕事の合間に三度も桃花に抜かせたのに、まだ犯したりないよ」

 それも夢利が持ち込んできた海外医療メーカー製の健康ドリンクの効果で、感度も持続力も何倍にも増してくれる素晴らしいものだった。
 夢利は、それ以外にもセックスドラッグや妖しげな催淫薬の類も大量に用意してきて、片っ端から桃花で効果を試していた。
 先ほどディルドウに塗り付けていた粘液タイプのやつは、その中でも特に強力な品で、秘部の粘膜に塗りつけられると一日中狂ったように腰を振ってヨガリまくることになる。
 麻薬成分も多く含まれる危険なものらしいが、ふたりは気にせずに連日桃花に使っている為、その強すぎる効果は解放される平日の昼間にも続いて、仕事中の桃花は激しい疼きに悩まされていた。

(最初の数日は強い理性で我慢してたみたいだけど、今じゃ、心ここに在らずといった感じで男性社員の股間ばかりみているよな)

 媚薬と連日の調教で徐々に理性を蝕まれいていった桃花は、今では仕事の合間に強要されるフェラチオ奉仕を積極的にこなすようになっていた。

(奉仕の褒美に、リモコンバイブを使うようにしたのが効果あったな)

 ここ数日、夢利が用意してきた貞操帯をはめさせて、秘部にはリモコンバイブを挿入させている。
 それを使って奉仕の対価として快楽を与えるようにしているのだが、効果はてきめんで、疼きを静めてくれる快楽欲しさにパプロフの犬の如く心身に奴隷奉仕の喜びを刻み込まれていく桃花であった。

「はははッ、まるで失禁したみたいに太ももまでビチョビチョじゃないか」
「そうなのよ、もぅ一日中欲情してるから、仕事中も牝臭が凄くって、キツイ匂いを誤魔化すのが大変よ」

 調教の成果に、嗜虐者たちは顔を見合わせて乾いた笑いを浮かべあう。
 そうして、灰獲も前から挿入するとサンドイッチで二穴を責め立てはじめるのだった。

「ひぃぃッ、や、やめてぇ……ぐうぅぅ、こ、これ以上は、おかしくなっちゃぅッ」
「なに言ってるんだよ、ここで寸止めなんてしたら、それこそ狂っちゃうだろ」
「そうよ、それに身体の方は、もう壊れてるじゃない」

 涙を流して哀願を繰り返す桃花を無視して、ふたりはガンガンと腰を打ちつける。

「引き込むように膣壁が蠢いて凄い締めつけだな。ほら、ほらッ、遠慮せずにイっちまえよッ」 
「あぁン、い、いやぁぁ……うむぅ」

 叫び声をあげる唇も灰獲の口によって塞がれて舌を吸われてしまうと、すかざず背後からは夢利が激しく双乳を揉みたててくる。

(あぁ、このままでは……どうにかなっちゃう)

 媚薬によって暴走させられた身体は、もう彼女の意思では抑えられなかった。膣壁が勝手に蠢き、挿入された男根を激しく締め付けてしまう。
 そうすると激しい肉悦が全身を貫き、脳が焼ききれそうだった。どうにか踏みとどまっていた桃花の理性も、もう限界だった。

「ひッ、だ、だめぇぇッ、もぅ、耐えられないッ」

 一度、理性が崩壊するともう駄目だった。決壊した濁流の如く理性を押し流して、肉欲に溺れる牝へと変えられてしまう。 
 ふたりの間で揉みくちゃにされながら、桃花は緊縛された身を痙攣したように震わせて悶え泣き、身体中の穴から体液を垂れ流しながら狂ったように腰をふりだす。
 そうして、今夜も理性を被虐の魔悦が渦巻く泥沼へと沈めらてしまい、一匹の卑しい牝奴隷へと変えられてしまうのだった。



 調教は朝方近くまで続き、最後にはタガが外れて狂ったようによがり続けた桃花も口から泡をふいて反応をしなくなってしまう。
 そんな桃花を大型犬用の小さな檻に押し込んだ二人は、昂りが治まらないお互いの身体をベッドの上で貪りあった。

「あー、満足、満足ぅ」

 逢瀬を存分に楽しんだ夢利は、ベッドの上で満足そうに転がっていた。

「まったくキミの性欲の底無し具合には、毎度、目を見張るよ」
「ふふ、そんなアタシに付き合える遊大クンもナカナカだと思うよぉ」

 汗で濡れ光る裸体で横たわりながらケタケタと笑う夢利に、同じく横になっていた灰獲は苦笑いを浮かべる。

(とはいえ、流石に僕も疲れたな)

 サイドテーブルに手を伸ばしてビニールで密封されている巻き煙草を手に取る。それは留学時代の悪友に、定期的に送ってもらっている大麻であった。
 常用は避けてはいたが、最近は夢利に触発されて頻繁に吸うようになっていた。特にセックスの後には、無性に吸いたくなってしまうので桃花の部屋には常備していた。
 それを口に咥えると、すかざず夢利が慣れた手つきでライターで火を点ける。そういう細かいところに気がきく彼女に、心地よさを感じる灰獲であった。

(この女、思わぬ拾い物だったな)

 派手で軽そうな外見とは裏腹に、夢利は細かいところまで気がきく女だった。
 それらは思慮深く計算された行動などではなく、どうすれば今を愉しめるか無意識に見極めて行動している結果だった。
 そして今も、瞳をキラキラと輝かせて隣にいる男を見つめながら、彼女は直感に従って甘く囁くのだった。

「ところでぇ、遊大クン、この間、面白そうな事を言ってたよねぇ」
「ん? なんの話だい?」
「もぅ、マゾ奴隷にしちゃった桃花や亜紗子を自慢したいってヤツよぉ」

 今と同じように余韻に浸っているときに、灰獲はそれを口にしていた。
 目立ちがりやである灰獲は、男性社員の密かな憧れ的存在である桃花たちを手に入れた自分の成果を見せびらかしたいという密かな欲望があった。
 だが、そんな事をすれば面倒なことになる事をぐらい、流石の彼でもわかっていた。

「ふふ、それ出来るわよ」
「…………え?」
「アタシの知り合いが、今度、ちょっとした秘密パーティーをやるんだけど、良かったらそこを紹介してあげよっか?」

 詳しく聞けば、有名人相手に定期的に開かれている秘密パーティーで、そこではギャンブルや違法ドラッグに始まり、モデルや新人芸能人の美女たち相手に乱交セックスまで楽しめるという。
 その催しの性質上、秘密厳守なので灰獲の欲望を満たす場としてはうってつけなのだという。

「もぅ、桃花や亜紗子の容姿なら、ぜーったいその場にいる芸能人たちより上だってッ、そんな美女の奴隷ちゃんを二人も従えた遊大クン、超目立つよねぇ」

 目をキラキラさせて期待する目で見つめてくる夢莉に、一応は思案する風にみせる灰獲であった。だが、自尊心をくすぐる彼女の言葉に、その心はすでに決まっていた。

「ま、まぁ、キミがそこまで言うのなら……しょうがないなぁ、そのパーティーに行ってやるよ」
「さすがーッ、ねぇ、ねぇ、どうせならさぁ、もっと場を盛り上げて目立てる事を思い付いちゃったんだけど聞いてよぉ」

 そう言って満面の笑みを浮かべる夢利は、あるプランを灰獲に聞かせるのだった。





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