憧れの女 −忘れえぬ想い−

【3】 拘束された獲物

 竜子さんが東京に戻ると、またいつも通りの日常が戻ってきた。俺は相変わらずバイト三昧の日々を過ごしていた。
 そうして二週間が過ぎた頃に、また例のバイトをするチャンスが訪れた。

「よぅ、お疲れッ、あのお客さんの映像がたまってるけど見るかい?」

 バイト先を訪れると、期待通りの言葉がまっていた。もはや、男の映像を見るのが目的のひとつと化していた。
 それに、事故を起こした相手が、あの男と同一人物なのかいまだに気にもなっていたのだ。

「そりゃ、勿論見ますよ」
「はははッ、今回は珍しく連泊しての長編モノだったぜ。俺も見たけど、今回もエグかったわぁ」
「へぇ、それは楽しみですね」

 逸る気持ちを抑えながら端末の前に座る。すっかり慣れた操作で、教えてもらった情報を頼りにサーバーの中から目的のデータを探しだしていく。

「いつもの施設で日付は二週間前っと……おッ、あったあった……へぇ、二泊もしてるのは初めてだよなぁ」

 男は気の強い女がお好みのようで、執拗な調教を繰り返して高いプライドをへし折っていく。俺の見た中での最長は28時間で、女弁護士を相手にしたものだった。
 必ず訴えて刑務所に送ってやるとえらく反抗的だった女だ。だが、ろくに寝る暇も与えぬ連続絶頂をくらい、もう逝きたくないと泣いて赦しを乞うことになった。そうして、最後には白眼を剥いて泡を吹く無様な姿をさらしていた。
 今回はそれ以上の時間を掛けているとなると、嫌でも期待が高まってしまう。

「おッ、はじまった」

 映像が流れると白い下着姿の女を荷物のように肩に担いだ男が現れた。
 女は手足を灰色のダクトテープで縛られグッタリとした様子だ。目元にアイマスクを被せられ、髪の毛ごとグルグルと巻かれたダクトテープが口を塞いでいた。
 そのせいで残念ながら女の素顔はうかがえなかったが、露出している鼻筋などからも美人なのがうかがえた。それに乱れた髪が竜子さんに似ているようにみえてドキッとさせられてしまう。

(い、いや、似ているだけだろ……そもそも男の方が違いすぎる)

 医師らしい診察鞄と高級そうなスーツ姿ではなく、大きなボストンバックを片手に革ジャンとジーンズというラフな服装だ。知的な眼鏡も掛けておらず、髪をオールバックに固めたワイルドな感じだ。  そもそも身にまとう雰囲気が違いすぎる。ギラギラとした獣のような眼差しは、まともな職業の人間がだすものではない。

(やっぱり、どう見ても別人だよなぁ……)

 そう自分を納得させて、落ち着かない気持ちを無理矢理抑え込むと映像に集中することにした。
 男は軽々と担いできた女を乱暴にベッドに転がすと、その上に跨がって手足の拘束を解きはじめる。
 当然、自由になった手足で女も抵抗を試みるのだが、アイマスクで視界を封じられているのもあって、思うようにいかないようだった。
 逆に掴まれた手足に次々と枷がはめられていく。男の作業は実に手慣れていて、動きにも無駄がない。相手の動きを封じながら枷の鎖をベッドの四隅へと繋いでいった。
 紺のシーツがひかれたキングサイズのベッド。そこに四肢を鎖で繋がれ、X字に磔にされた女がいた。自由になろうと足掻いてみせるが、ピンと張った鎖はキシキシと軋むだけだ。
 身体の自由を奪われ、アイマスクで視界も塞がれている。叫ぼうにも貼られたダクトテープで呻き声にしかならない。普通ならそれで不安と恐怖に震えているだろう。
 だが、画面の女は気丈にもそれに耐えていた。それどころか男の気配を感じる方へと威嚇の唸りすらあげていた。

(今回のは、随分と気が強そうな女だな)

 憧れの女性が竜子さんだった影響もあって、こういう勝ち気なタイプが俺の好みだった。だからこそ余計に、これからその身に降りかかることを考えると卑しくも興奮してしまうのを抑えられない。

(それにしても、身体の方もすげぇなぁ)

 ほどよく鍛えられたスレンダーなボディでありながら、純白のブラジャーに窮屈におさめられた乳房は、男の大きな手にも余るボリュームを持っていた。
 対するヒップの方は小さめで、スラリと長い脚には見惚れてしまう。その脚線美を男も気に入ったようで、そのラインを堪能するように指を這わせると、女が嫌悪の呻きをあげていた。

「うッ、んぐぅ、ぐぅぅ」
「クスリがまわるまで随分と好き勝手に暴れてくれたよなぁ、だが、こうなればもうこっちのものだな」

 ヘッドホンから男の声が聴こえてくる。耳によく響いてくる低く落ち着いた声だ。だが、隠し撮りのオマケ程度に備えつけられた集音マイクの音質では、あの男だと断言できるほどではなかった。
 そうしている間に、男が着ていた衣服を脱ぎ捨てていた。細身だがしっかり鍛えられた肉体が露になると、背中に彫られた刺青が見えるようになる。迫力のある般若がジッとこちらを睨みつけているようで不安な気分にさせられた。

「これから穴という穴を犯して、この身体に嫌ってほど被虐の快楽ってやつを刻みこんでやるからな。すぐにチ×ポ欲しさにケツを振る卑しいマゾ豚奴隷に躾てやるよ」
「むぐぅぅ……」

 黒いボクサーパンツ姿になった男は、捕らえた獲物を品定めするように眺めると、その魅力的なボディに舌舐めずりをする。
 その手にはボストンバッグから取り出したガラス瓶が握られており、それを傾けて中身を女の身体へと垂らしはじめる。
 ドロリとしたピンク色の粘液が柔肌を濡らし、純白の下着に染み込んでいく。
 それは男が愛用している性感ローションだった。麻薬成分を含んでいる非合法な品らしく、流通量が限られて値もはるが媚薬効果は強力で中毒性も高いという。
 塗られた部分から熱をおびはじめ、皮膚感覚が何倍にも敏感になる。特に粘膜に使用されると効果は絶大で、何人もの女がその激しい疼きに悶え苦しむのを見てきた。
 今回は惜しげもなく使用するらしく、全身に塗りたくると、ブラジャーをナイフで切り裂いて今度は乳房を揉みたてるように塗り込んでいく。
 ブラジャーから解放されても、乳房は崩れずに綺麗な形を保っている。それをゴツゴツした男の指が深く食い込み、無惨に変形させていった。
 そうして拘束された全身に性感ローションを塗り込まれた女は、その透き通るような白い柔肌を妖しく濡れ光らせていた。
 その効果はすぐにあらわれはじめた。全身の皮膚がまるで酔ったように徐々に朱く染まり、荒くなる呼吸に双乳が大きく上下しはじめる。
 次々と浮き出る汗の珠が、ツーっと柔肌を伝う。それだけで女はゾクゾクと身を震わせてしまうほど肉体の感度は上がっていた。

「早くも効きはじめたようだな。もっと塗ってやろう」
「ふッ……うぅぅン……んぐぅ!!」

 男の指がショーツの中へと侵入していた。透き通るレース生地越しに、指先が柔毛をかきわけ股間へと伸びていくのが見える。その先の秘唇へと到達すると、指先につけたローションを丹念に塗りつけていった。
 男に秘部を触れられて女は嫌悪の呻きをあげていた。だが、次第にそれは甘い音色を含みはじめ、切なげなものへと変わっていく。そうして、知らぬ間に細腰が刺激を求めるように切なげに振られていた。
 媚薬が浸透するに従い、その効力に徐々に抗えなくなっていく女の姿に、男はほくそ笑んでいた。

「いい感じに出来上がってきたなぁ。それじゃぁ、もっといい声で啼かせてやるよ」

 男はタマゴ型のローターを次々と取り出すと女に装着していった。硬く尖りはじめた乳首を挟み込むように、ふたつのローターがテープで固定される。次にショーツをズラして股間の隙間からローターを秘部へと押し込んでいく。ひとつ、ふたつと押し込まれると、電源を入れた。

「ほら、啼けよ」
「――うぐッ、ふぐぅぅッ」

 タマゴ型の淫具が振動しはじめた途端、拘束された女体が震えた。
 性感ローションによって感度を引き上げられているのだ。普段の何倍にも増幅された強すぎる刺激に、女は首を振って呻き声をあげる。

「おら、追加だ」

 男の手には電動マッサージ機が握られていた。コケシ型の先端が低い駆動音を響かせて振動すると、それを女の股間へと押しつけた。
 アイマスクで視界が封じられて、完全な不意打ちだった。ショーツ越しのクリ×リスを責められて、女が顎を仰け反らせた。

「――ふぐぅッ!! ぐふ、ぐぅうぅぅぅ」

 苦しげにキリリとした眉を寄せ、巻きつけられたダクトテープの下で、くごもった呻き声をあげている。鎖に繋がれた四肢が震え、全身の汗を飛び散らせながら身を捩らせる。
 電動マッサージによる強烈な刺激から腰が逃げようとする。だが、拘束された身ではわずかしか動けず、すぐに肉芽への責めが再開してしまう。
 グリグリと執拗に女の急所を責められて目が眩むほどの刺激に襲われているのだろう。女の呻きは高まり、望まぬ絶頂へと強制的に追いたてられていった。

「ふぐッ、ふぐうぅぅぅぅッ」

 ひときわ高い呻き声とともに、折れんばかりに女の身体が仰け反る。ブリッジした姿勢のまま、その股間から失禁したように透明な液体が吹き出した。
 純白のショーツを激しく濡らして滴るほどの絶頂に身を震わせた女は、一呼吸おいてガックリと崩れ落ちた。荒々しい鼻息とともに美乳が激しく上下していた。

「おらッ、休めると思うなよ」

 絶頂の余韻に浸るように女は身を震わせていた。だが、男はその暇すら与える気はないようだ。すぐさま電動マッサージによる責めを再開する。

「――むぐぅッ!? んんーッ」

 絶頂後でただでさえ感じやすくなった肉体だ。媚薬効果で何倍にも増幅された刺激を受ければ、どんなに強靭な精神を持った女だろうと堪えることはできない。
 踏みとどまることもできずに、すぐに次の絶頂を迎えてしまう。

「おら、どんどん逝けよ」
「むぐーッ、ひッ、ひぐぅぅ」

 止むことない電マ責めに、絶え間なく絶頂させられ続ける。もはや次々とくる刺激に逝った状態からおりられない状態になっていた。
 目の前に火花が散るほどの強烈な刺激に、思考は真っ白に染め上げられて、自分がどんな状況なのかも把握できなくなっている。まるで電流を流されたように全身を激しく痙攣させて、股間から潮を吹き続けていた。

(あぁ、こんな責めが続いたら、この女も確実に堕とされてしまうな)

 そう思いながらも俺はこれまで感じたこともないほどの興奮に身を震わせながら、口元に笑みを浮かべていた。どうして男の映像に魅せられていたのか理解したからだ。
 無意識のうちに調教されていく女たちに竜子さんを重ねていたらしい。
 長年、竜子さんに想い焦がれていた俺は、それは赦されぬ想いであるのを理解していた。だが、実際に彼女を知らぬ男に奪われたとき、悔しさと怒りで気が狂いそうになっていた。
 いくら理性で鎮めようとも強い衝動に突き動かされそうになった。

――好きな女を力ずくで奪ってやれッ

――それが出来ぬなら、なにもかも壊してしまえッ

 脳裏に囁く言葉は甘美な響きをもっていた。それに従いそうになった俺だったが、辛うじて踏みとどまることができた。
 その想いを心の奥底に埋めて、忘れようとしてきた。だが、何人もの女を抱こうとも、憧れの人への想いは消えなかった。
 だから、こうして男の映像を見ていると封印したはずの歪んだ欲望が再び蠢いて、俺に昏い悦びを与えているのだった。





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