化面夫婦 (2/3)

 誰かの視線にあわせて固定されたカメラの映像なのだろう。その視界の高さから巨漢であるのが容易にうかがえる。

――それが先程のエレベーターに乗り込むところだった……

 扉が左右に開いてエレベーター内に設置された鏡にその姿が一瞬だけ映る。タンクトップと黒革のパンツをはいた巨漢の男。まるで岩のようにゴツゴツと盛り上がった筋肉達磨のような肉体の持ち主で、ニッと歯を剥き出しにして笑う毛むくじゃらの顔は類人猿のようだ。ひとめで粗暴さがうかがえる眼差しに嫌悪が湧いてしまう。
 左手には大型のキャリーケースを持っていた。大人の男でも抱えるのに苦労するような大きさも巨漢の男は軽々と片手で扱っていた。
 男の毛深い手がその中から何かの端末を取り出すとケーブルで繋がったカードを認証用のスリットへと差し込む。太い指が端末にあるキーボードを叩いていった。

――それで終わりだった……

 強固が売りの最新鋭のセキュリティが、それであっさりと破られていた。エレベーターは何事もなかったかのように上昇を開始すると、あっという間に最上階へと到達してしまう。
 ゆっくりと開いた扉の向こうには、笑顔を浮かべて出迎える彼女の姿があった。
 デニム生地のズボンとクリーム色のセーター姿という飾らない服装で、そういうカジュア ルな服装にホッとしてしまう僕に合わせて彼女はいつも服装を選んでくれていた。
 だが、乗っていたのが僕でないと気付くと、その魅力的な笑顔が凍りついていく。
 ノシノシとエレベーターをおりて近づいてくる相手に、ハッとしたように側の壁にある警備員用のボタンを押した。

「な、なんで……」

 ボタンをカチカチといくら押しても警備員からの応答はなく、警報がなる気配もない。
 だが、決断の早い彼女はすぐに次の行動に移っていた。すぐさま奥へと駆けだそうとする。
 その背後へと太い腕が迫り、あと一歩というところでセーターを掴まれてしまった。

「くぅ、は、放してッ」

 振りほどこうとして、万力のように男の手がセーターをはなさないと判断すると、彼女は振り向きざまに男の股間を蹴り飛ばしていた。
 海外生活が長い彼女は護身術を習っていると聞いていた。それは相手を倒すというよりも、ひ弱な女性が相手の不意をついて逃げる為のものだが、今はそれが十分役に立った。
 流石に怯んだ男から逃れる為に、素早く伸びたセーターを脱ぎ捨てる。黒のノースリーブ姿になった彼女は迷うことなく奥へと逃げ出していた。

「ぐぁッ、このぉ牝犬がぁ……」

 怒りに震えるダミ声が聞こえた。だが、不思議なことに男はすぐに駆け出して追わなかった。ノシノシとゆっくりと歩いてペントハウスの奥へと進んでいく。
 その歩みは遅く、まるで獲物を追い立てるように慎重に進んでいくのだが、僕には彼女がどこへ向かったかわかっていた。

(言いつけ通りにしてくれたな、あそこに逃げ込めばもう安心だ)

 こういう事態にも対応できるよう書庫に使っている部屋に隠し部屋を造らせておいた。壁に設置された本棚の裏にパニックルームがあるのだ。
 日本では馴染みの薄いが緊急避難用の部屋で、災害や強盗から身を守る為に強固な壁に覆われたシェルターだった。
 別系統の電源やIP電話もかけれる専用の回線を備えてあり、部屋をロックすると自動的に警備会社へと連絡がいく手筈もなっている。

(……どうしてだ?)

 映像を見ているうちに僕は奇妙なことに気がついた。数々の部屋があるペントハウスなのに、男はまるで隠し部屋の存在を知っているかのように迷わずに書庫へと向かっていたのだ。
 そして、書斎に入ると本棚をスライドさせる隠しボタンを無造作に押して、入り口である銀行の大金庫のような銀色の扉を露にする。
 だが、このパニックルームは外部から開けることは容易ではない。分厚い壁を破壊するにも特殊な工具が必要だし、電子ロックは中からしか開けられない造りになっていた。

(……なんだ?)

 男がとった行動は予想外なものだった。携帯を取り出すと誰かに連絡を取りはじめた。

「俺だ……あぁ、たのむ」

 それだけ言って通話を切る。すると、信じられないことに正面の扉の電子ロックが大きな音を立てて解錠されるとゆっくりと開きはじめたのだ。

(なッ、なぜだッ!?)

 驚いたのは中に隠れていた彼女も同様だろう。そして、扉が開いてしまえば安全な場所が一転して袋小路となってしまう。
 ヌッと扉の隙間から顔を入れた男の顔に、美しい顔を強張らせる彼女がいた。

――それでも、手にしていたスタンドで果敢にも殴りかかってくるのだから、大した度胸の持ち主だろう……

 だが、不意打ちではなく正面から攻撃など男は軽くあしらってしまう。片手で受け止めると代わりに強烈な平手打ちが襲い、彼女は派手に吹き飛ばされていた。
 その衝撃で口の中が切れたのだろう。口元から血を流す彼女。その髪をわしづかみにされてパニックルームから連れ出されると、そのままズルズルと引きずられていった。

「ぐぁ、は、放して、放してよッ」

 ジタバタと暴れる彼女の手足が時おり男にヒットするのだが、岩のような肉体はビクともしない。
 そのままリビングまで連れ戻されると、ソファへと乱暴に放り投げられてしまう。その際、綺麗な髪が何本もプチプチと千切れて男の指に残ったのが見えた。
 それをふるい落とした男は、持ってきていた大型のキャリーケースをフローリングの床に寝かせて蓋を開けていく。その中には麻縄の束や黒革の拘束具、バイブレーターなどの女性を責める道具がギッシリと詰まっていて、その中から一本鞭を手に取ると無造作に横へと振った。

――ヒュンッ

 風切り音と共にしなる鞭が、逃げ出そうと駆け出していた彼女の脚へ派手な音を立てて命中する。
 その激しい痛みに声も出せずに横転してしまうと、ゆっくりと立ち上がった男が迫っていった。
 気丈な彼女もさすがに恐怖の色が浮かべていた。痛む脚を引きずりながら逃げようと必死に這いつくばる。そんな彼女の背へと鞭が無情にも再び振りおろされた。

「ぐあぁぁッ」

 鋲が仕込まれた鞭が打ち込まれると着ている服が簡単に裂ける。その下の白い柔肌に朱の鞭痕がくっきりと刻み付けられた。
 激しい痛みに彼女が苦悶の表情を浮かべると、男は愉快そうに肩を震わせているのが画面の揺れでわかる。先程の仕返しとばかりに、更に鞭を振り続けていった。

――バシンッ……バシンッ……

 柔らかい肉を打ち付ける鞭の音が室内に鳴り響き、それに重なるように彼女の苦悶の呻き続く。
 せめて顔だけは守ろうと両手で庇って身を丸めるだが、衣服は引き裂かれてボロ布と化していった。

「ぐあぁッ、も、もう止めてぇ、だ、誰か助けてッ」

 止まることのなく振り下ろされる鞭に、ついに彼女は悲鳴をあげて助けを求めだした。
 だが、いくら叫ぼうが助けは来るはずもなかった。個人のプライベートを守る高い遮音性能が階下まで声を届かせない。ましては、ここは最上階を占有するペナントハウスだ、このフロアには他の住人などもいない。
 その事を聡明な彼女も理解はしていたはずだが、助けを呼ばずにはいられない精神状態まで追い込まれていたのだろう。
 ふたりの秘密の場所が今や巨大な密室と化していた。誰も助けがこない状況を理解してしまうが故に、彼女は深い絶望へと落とされていく。
 それを僕はただ見つめることしかできないのだ。ただ、自分の無力さを噛み締めさせられた。

「も、もう……止めて……お願いだから……」

 ようやく男の手が止まる頃には、気丈な彼女の心は完全に折られていた。凛とした美貌を涙と鼻水で汚し、子供のように泣きじゃくっていた。
 床で丸まったまま恐怖に震える彼女へと男の手が伸びると、残っていたボロ布もビリビリと引き裂かれて丸裸へとしてしまう。

「ぐふふッ」

 恐怖に怯える姿が愉しくてたまらないのだろう。不気味な笑い声と共に画面が小刻みに震える。
 男は彼女の細い足首を掴んでソファの近くまで引きずり戻すと、ケースに収められていた拘束具を手にして迫っていった。

「い、いやッ、なにをするの……あぁ、いやぁぁッ」

 嫌がる彼女の腕を軽々と背後へと捻りあげると、交互に組ませた前腕へと幅広の枷を巻き付けていく。拘束具に備え付けられたベルトが締め上げると、ギチギチと革がしなる音がリビングに響き渡る。
 両脚もそれぞれを膝を曲げさせられると同様に拘束具が巻き付いていく。踵がお尻につくような状態に、太ももと脛を覆ったベルト状の拘束具で固定してしまう。
 そうしてベルトの穴を通したU字金具へと南京錠をかけていく。

――カキンッ……

 金属音を立てて南京錠が施錠される。そうなると、もうベルトを緩めることも出来なくなってしまう。

――カチンッ……カチンッ……

 次々と拘束具のベルトが南京錠で施錠されいった。そうして彼女の手足は完全に自由を奪われていった。

(あれでは自力で拘束具を外すことなんて不可能だ)

 それでも自由になろうと必死に足掻く彼女。その髪をつかんでグイッと顎をあげさせた男は、続いてその細い首に新たな拘束具をつけていく。その形状は骨折時に固定するコルセットのようで、装着すると顎を下げることすらままならなくなっていた。

「あぁ……こ、こんなの嫌よッ、あぁ、外してぇ」

 奴隷のように枷をつけられて自由を奪われる恐怖に、彼女が拘束された身を震わせる。
 拘束具を外そうと身を捩っても、ギチギチと革のしなる音がするだけで緩む気配もない。
 それどころか、男が背後では再びケースの中をゴソゴソと漁りだしても、振り返って確認することも出来ずにいるのだった。
 ただ恐怖で押し潰されそうなのをグッと耐えるしかなかった。



 再び彼女の前へと戻った男の手には、奇妙な道具が持たれていた。ふたつの鉄の板を何本もの金属のボルトで繋いだものだ。
 彼女の綺麗なラインを描く釣り鐘型の乳房。その上下から鉄の板で挟み込むと、器具を使って左右のボルトをキリキリと締め上げていった。

「あぁ、い、痛いッ」

 徐々に狭まる隙間に双乳が押し潰されていった。根元を押さえつけられて、板の隙間から絞り出されていく。
 僕の目の前で美しかった双乳が無惨に変形させられていった。

「うぅ、ひ、酷い……なんでこんな目に……」

 自分の身に起きていることが信じられないのだろう。無惨に変形してパンパンに張って突きでている乳房を見下ろして目じりに涙を浮かべていた。

――だが、彼女を襲う不幸は始まったばかりだった……

 男がズボンのポケットから細長いケースを取り出すと、その手には鋭利に尖った針……いや、もはや釘と呼ぶべきだろう太さのものが握られていた。
 それを目にして、涙を浮かべていた彼女の表情が強ばっていく。

「な、なに……そ、それをどうするつもりなの……」

 その反応に、この男ならニタリと残忍に笑ったことだろう。
 ケースの残っている中身を掴むと手を広げて彼女に見せつける。それは大小様々なサイズの沢山の銀のリングだった。

「これって、まさか……」

 それがピアスらしいと理解すると、彼女はガタガタと震えだしていた。
 男は彼女を仰向けになるように床へと倒すと、そのまま腹の上へと馬乗りになった。腹部に男の体重がのって苦しげにする彼女だが、男が手にした針が乳首を貫こうとしているのに気が付くとすぐに半狂乱になった。

「い、いや……そんなの嫌よッ、あぁぁッ、止めてぇぇ――ぎぁぁぁぁぁッ」

 次の瞬間には、太い針が彼女の乳首を貫いていた。ただでさえ敏感な乳首を麻酔もなしに貫かれたのだ。その苦痛は想像するのは難しくない。
 だが、それで終わらない。男の持つ針はもうひとつの乳首も狙っていたのだ。

「ひぃッ、あぁ……い、いやッ、お願い、お願いします。もう止めてぇ」

 涙ながらに懇願をしだす彼女だが、それで男の動きが止まるはずもなかった。
 次の瞬間には、大きな針に再び乳首を貫かれて、彼女は再び凄まじい絶叫をあげていた。
 愛する女性があげる絶叫。それに僕の胸は引き裂かれそうだった。心がピシリッとひび割れて、涙が頬を濡らしていく。
 だが、目を画面から離すことができず、この無惨な光景を脳裏へと刻み込んでく。
 それに引き換え男は実に愉しそうだった。彼女の絶叫をBGMにして鼻唄混じりに作業を続けていた。適切な処置を手際よくおこなうと、アルコールで消毒した穴へと銀のリングピアスを通していった。
 乳枷に押し潰されて鬱血しだした双乳の先端で、乳首を貫通したリングが揺れている。
 だが、男の手には大量のリングピアスがまだまだ残っていた。

(まさか……)

 男は片足をあげて馬乗りになっていた身体の向きをグルリと変える。その矛先を今度は下半身へと変えたのだ。
 膝立ち状態になっている彼女の両脚を大きく広げさせると、自分の脚で器用に押さえつけていく。
 そうして剥き出しとなった股間へと手を伸ばして、太い指で少し濃いめな柔毛の茂みをかき分ける。その下に隠れる彼女の肉芽を太い指で摘まみあげていった。

「な、なにを……ま、まさか……」

 彼女も男の狙いを理解したのだろう。拘束されて不自由な脚で阻もうとするのだが男の脚に抑え込まれて不可能だった。
 まるで解剖されるカエルのように惨めに脚を折り曲げて秘部をさらす彼女には、もはや男の温情にすがるしか方法はなかった。

「許してください、お願いします、お願いしますから……」

 だが、それは嗜虐者をただ喜ばせる行為でしかなかった。
 哀願を繰り返す彼女の肉芽が包皮を剥かれて露出する。グリグリと唾液をまぶした指先で刺激していく。
 特にそこが敏感すぎて弱い彼女は、強すぎる刺激にヒィヒィッ短い悲鳴をあげていた。
 凌辱者にいいように触られて悔しいだろうに肉体は反応してしまう。刺激をうけて肉芽は、みるみると硬く膨らんでいった。
 そんなところに針先が食い込み、プツッという感触と共に貫通していた。

「――ぐぎぃぃぃッ」

 知的さが漂う彼女の口から耳を覆いたくなるような凄まじい絶叫が放たれた。
 だが、次の瞬間にはピタリと静かになっていた。
 チョロチョロと水音に気がつけば、彼女は失禁して気絶していた。股間から溢れでる尿がフローリングの床を濡らして広がっていく。
 男はその姿が愉快でたまらないとばかりに肩を震わせて笑うと肉芽にもリングピアスを装着していく。
 そのまま気を失ったままの彼女の秘唇にも次々と穴を開けては、小さなリングのピアスをつけていった。