タナトスの囁き −双隷侵蝕−

【8】 鏡像 −鏡が映しだす姿−

 真帆は手渡された奴隷衣装を身につけると、紅がリビングへと持ち込んだ姿見の前に立たされた。そこに映る自分の姿。その卑猥さに、赤面して鏡の前から離れようとする。
 だが、背後にいる紅がそれを許さなかった。肩を掴んで動きを封じると、鏡越しに見つめながら囁いてくるのだ。

「だめだよ、ちゃんと自分の姿を見て、現実を受け入れるんだ」

 口調は優しげだが、そこには拒否を許さない響きがあった。真帆は悲しげに表情を曇らせるが、おずおずと視線を戻していった。
 モデル並みのスリムなプロポーションでありながら、胸元は豊かな膨らみをもった裸体がそこにある。その透き通るような白い肌とは対象的な黒革の奴隷衣装がその身に巻きつき、卑猥に変形させていた。
 細首に巻きついた首枷から垂れ下がる三本のハーネス。それが豊乳を根元から締め上げ、砲弾のように突き出させている。
 衣装とはいったが、乳房を隠すどころか卑猥に変形させている代物だ。剥き出しになった乳首にはノンホールピアスが挟まれ、銀の鎖でお互いが繋がれていた。身動ぎするたびに、ジャラリと鎖が揺れて冷たい光沢を放つ。
 その下にあるのはコルセットだ。ギリギリと限界までにくびらせた腰は折れんばかりで、呼吸もままならない状態だった。
 そこから更に延びたベルトが太ももまで覆うロングブーツへと繋げられているのだった。
 股間を覆うのは超ローライズのビキニパンツだ。辛うじて肉芽を隠れているものの、綺麗にカットされた柔毛は丸見えだ。さらに股間を縦に割るように走るファスナーを開けば、簡単に秘部を触れることが出来るものであった。
 そうした姿を奴隷らしく仕立てているのが、手足に装着された枷だろう。首枷と手足の枷が鎖で繋がれている。ちょうど土の字に繋がった鎖によって手足の動きが大きく制限され、さながら護送される女囚のようであった。

「うん、奴隷姿が実によく似合っているよ」
「あぁぁ、そんな事を言わないで」
「そんなに恥ずかしがることもないだろう? 真帆だけじゃなく、私も着ているんだから」

 紅もまた深紅のボンデージ衣装を身につけていた。
 光沢を放つエナメル生地でできたハーフカップのビスチェと真帆同様の超ローライズのビキニパンツだ。それに太ももまで覆うピンヒールブーツに、手首や足首に装着された枷も同様だ。
 だが、堂々とした佇まいから受ける印象は真逆で、SMの女王様のような迫力まで感じさせているのだ。

「そうだけど……」
「ほら、また目を反らす。今度、やったらお仕置きするよ」
「あぁ、そんな意地悪を言わないで……あッ、あぁン……だめッ、触っちゃいやよ」

 背後から抱きしめていた紅は、真帆の柔肌へと指を這わはじめた。
 言葉では嫌がっているものの、真帆の抵抗は弱い。それをいいことに指先の動きが大胆なものへとなっていった。
 羞恥で赤らみはじめた柔肌はジットリと汗をかきはじめていた。おかげで指先に肌が吸い付くようであった。

「あぁン、なんか……すごく、敏感になっているの」

 紅は砲弾状に突きでた双乳を両手で掴みあげ、その弾力を楽しむように指を食い込ませ、荒々しく揉み上げていく。その一方で指先で乳首を挟むピアスを弄ぶのだった。

「あン、だめぇぇ、感じすぎて頭が痺れてきちゃう」

 紅の愛撫にゾクゾクと身体を震わせる真帆は、すでに足腰に力が入らなくなっていた。生まれたての小鹿のように両脚を震わせ、背後の紅に身を預けてくるのだ。

「私の手で乱れる真帆に凄く興奮しちゃうよ。もっと、もっと淫らな真帆を見たいな」
「あぁン、そんなのダメよぉ」
「それこそダメだよ。私に任せると言った時点で、真帆には拒否権はないからね」

 真帆は床に膝をつかされると、そのまま四つん這いの姿勢にされた。ちょうど手足を繋ぐ鎖はその姿勢を維持する最適な長さになっているようだった。
 床に手をついた真帆の首枷に素早くリードが繋げられる。そのまま犬の散歩をさせるかのように引っ張られてしまう。

「あぁ、嫌よ」
「ほら、とっとと歩く。それともお仕置きが欲しいのかな?」

 紅の右手にはいつのまにか鞭が握られていた。九条鞭という九本のしなやかな革紐が連なる鞭だ。振り下ろされると派手な打撃音をたてる。

「ひッ、や、やめてぇ」
「歩かないと、次は当てるよ」

 大きな音のわりに威力が低いものだが、そういう知識のない真帆には効果覿面だ。鞭で威嚇されながら広いリビングを四つん這いはじめる。
 時おり横切る鏡に四つん這い姿の自分が映る。首枷のリードを引かれ、鞭に追いたてられる様は、まるで家畜のようであった。
 人間としての尊厳を踏みにじられ、まさに奴隷へと堕とされた気分にさせられる。こんな恥辱を受けたのは二十七年の人生ではじめのことだった。
 つい数日前までは海外で英文学の研究をしていた自分が、今はこんな卑猥な衣装を身につけ、同姓に奴隷のように扱われている。そんな予想もできなかった事態に、胸が張りさせそうな想いだった。
 その一方で、そんな絶望の闇の奥に、なにかいいようのない気配を感じはじめてもいた。
 それはパンドラの箱だ。決して見てはいけないものが封じられていると本能が訴えている。だが、それを覗いてみたいという欲求は徐々に強まってしまっていた。

――リーン……リーン……

 いつしか、脳裏にあの鈴の音が響いていた。それが反響し、脳を揺さぶると、まるで夢を見ているかのように現実感が薄れはじめ、思考能力が低下してしまうのだった。

「おやおや、気づいているかい? 真帆の股間からなにか滴っているものがあるよ」

 指摘を受けて、真帆はゆっくりと振り向く。これまで移動してきた床に転々と水滴の痕があった。太ももを激しく濡らし、滴る愛液の感触にいままで気が付けていなかったのだ。

「えッ……う、うそよ、そんなはずは……」
「なら、確かめてあげるよ」

 事実を受け入れられずに茫然としてしまう真帆。その背後にまわると、紅は股間のファスナーを下げはじめる。真帆が制止する間もなく秘部がさらけだされてしまう。

「おやおや、スゴいことになっているよ。ほらぁ、こんなにグッショリだ」
「あン、さ、触らないでぇ」

 紅の指先が触れなくても、そこがどういう状況かは嫌でもわかる。ビキニパンツが開けられた瞬間、酸味の強い牝の香が室内に拡散していたのだ。
 指先で秘唇が押し広げられると、膣内からドロリと大量の愛液が溢れだす。その中を無造作に掻き回されては、グジュグジュと恥ずかしい水音が耳元まで響いてしまうのだった。

「ほら、聴こえるだろう?」
「あぁぁン、やめてぇ」
「そう言っているわりには、物欲しそうに腰を振っているじゃないか」
「くぅン……あぁぁ、だ、だってぇぇ」
「やっぱり、真帆にはマゾの素質は十分にあるよね。これなら美帆の気持ちも、すぐに理解できそうだよ」

 腕の力も抜けてしまった真帆は、突っ伏した状態で尻だけを高々とあげている。紅の指の動きに呼応するようにのの字を描き、溢れだす媚声を堪えることもできずに、よがり泣いた。

「あぁ、そんないい声で泣かれちゃうと、こっちも我慢できなくなるな」
「あぁン、いやぁン、抜かないで……」
「まってて、すぐにもっと気持ちよくしてあげるからね」

 紅が持ち出したのはペニスバンドだ。それを装着すると腰には黒光りする男根が生えていた。浮き出た血管まで再現した妙に生々しい造形だ。太さは三センチ近くあり、長さも二十センチを越えている超ロングサイズだ。
 ボーイッシュな容姿もあって、その姿が実に様になっている。手慣れた手つきでローションをまぶすと、ゆっくりと真帆へと近づいてくる。

「お待たせ」
「あぁぁン、はやくぅぅ」

 突きだしたヒップを揺すり、淫らに催促をしてくる。その色狂いした女が、海外で一目を置かれている聡明な女性研究者だと誰が思うだろう。そのギャップの激しさに紅は乾いた笑みを浮かべてしまっていた。

「ほら、挿入するよ」

 真帆の背後に陣取ると、ゆっくりと切っ先をパックリと口を開いた秘裂へと押し当てていった。

「あぁぁン、いいッ……あッ……あぁッ、すごく大きい」
「ははッ、ドロドロで難なくこのサイズを咥えこんでいくね。ほら、もうすぐ根元まではいっちゃうよ」
「ひぃン……あぁぁン……す、すごいッ、すごい感じちゃう」
「ほら、自分でも動いてごらんよ。獣の交尾みたいに、卑猥にお尻を振ってごらん」

 紅の指示に誘導されるように、真帆も細腰を振りだす。その度に垂れ下がった豊乳が激しく弾み、ピアスチェーンが揺れるのが見える。
 乳首の刺激も甘美なものとして受け止めているのだろう。うっとりした様子で、口許から涎すら滴らせていた。

「んんッ、すごいッ、あン、あぁぁン、すごい感じちゃうぅ、こんな獣みたい格好で……くぅン……は、恥ずかしいのにぃ」
「それは真帆がマゾに目覚めはじめているからだよ。恥ずかしいのに感じちゃうのが、その証拠さ」
「あぁぁ、そんな……私は……マゾなんかじゃ……ひぃン」
「まだ、そんなこと言ってるのかい? こんなにグチョグチョに濡らしてさぁ、盛った牝犬みたいに涎たらして、ほら、目の前にある鏡に映る自分を見てごらんよ」

 真帆が面をあげると、そこには姿見の鏡が置かれていた。四つん這いで背後から紅と結合して自分の姿がそこにはあった。
 高々と突き上げた尻の谷間から、ヌラヌラと愛液をまぶした漆黒のディルドウが見える。
 それで深々と突き上げられると、恍惚とした表情を浮かべた自分が牝声をあげてよがり狂っていた。開ききった口許からはダラダラと涎を垂れ流し、ユサユサと揺れる乳房を自分で揉み上げもしている。

(そんな……この欲情した女が、私だというの?)

 その痴態をさらす女が自分であると素直に認めたくはなかった。だが、徐々に意識が現実へと戻されると、背筋を走り抜ける激しい肉悦に身を震わせて媚声を洩らしてしまうのだった。

「あぁ、こんなのぉ……あぁぁン、わたしじゃないぃぃ」
「まったく強情だなぁ。もういいよ。じっくりと真帆がマゾだとわからせてあげるから、今はイってスッキリしちゃいなよ」
「あぁン、あぁぁぁン、感じすぎてぇ、あ、あたまが……真っ白になっちゃう」
「あぁ、そのまま昇天しちゃいなよ。あんまり我慢すると、本当に壊れちゃうからね」

 細腰を掴んで紅が本格的にラストスパートに入った。腰を打ちつけるたびに室内にパンパンと乾いた肉音が響き渡る。それに被さるように真帆の牝啼きが高まっていく。
 そうして、徐々に昇りつめた真帆は激しいエクスタシーを迎えるのだった。

「あぅ……くぅぅ……い、いっちゃぅぅ」

 雄叫びをあげる四足獣のように激しく身を反らせ、プルプルと裸身を痙攣させる。
 そのまま時が止まったように硬直してい彼女は、遠退く意識とともに崩れ落ちていった。



「ん……うぅん……」

 真帆は気だるい微睡みから目覚めると、身体の違和感に気がついた。窮屈な姿勢から身動きが取れないのだ。それに加えて視界も聴覚も塞がれているようなのだ。

(私はいったい……)

 暗闇の中で混乱しつつも背中に感じる感触からソファに座らされているのを理解する。
 首の後ろへと回された手首を括られ、背後へと引っ張られている。大きく胸を反らした姿勢で、両脚をそれぞれ折り曲げられた状態で固定されていた。
 大きく左右に開かされている様は、まるでカエルのような無様な姿だろう。ソファの上でM字開脚をさせられたポーズのまま、ガッチリと拘束されているのだった。

「んッ、んぐぅぅ」

 声を発しようとも口に何かが噛まされ大きく開かされたまま固定されていた。その口腔を埋めるように太くて長いなにが押し込まれており、それは喉先まで達している。
 そんな状態から自由になろうと足掻いてみるも、拘束は緩む気配をみせず、無駄に体力を使った結果となった。

「あぁ、目覚めたようだね」

 突然、耳元に紅の声が響く。すると視界一杯に彼女の笑顔が現れた。

「やぁ、見えてるかな……うん、その反応はちゃんと機能しているみたいだね」

 どうやら頭部にゴーグル型のモニターが装着されているらしい。耳に押し込まれているのは、そのイヤホンだろう。
 視界がグルリと回転したかと思うと、今度はソファに拘束された真帆の姿が映しだされる。
 奴隷衣装まま、黒革の拘束具でリビングにあるソファにM字開脚姿で縛りつけられていた。
 頭部はゴーグルと鼻下を覆う口枷によって殆ど隠れた状態だ。口許の銀のリングに縁取られた部分が浴槽の蓋のようだ。それが人権を無視して物扱いされているようで屈辱をいっそう煽る。
 だが、肝心なのはその先だろう。身体中にコードから延びた器具が装着されているのだ。
 砲弾状に突き出た乳房の先端で硬く尖る乳首、今はピアスは外され、代わりに挟み込むように配置されたタマゴ型のローターがふたつテープで固定されている。
 さらには脇腹や太ももには低周波マッサージ器のパットが貼りつけられており、ファスナーの隙間から何本ものコードが内部へと入っていた。
 異物の感触から肉芽にもローターが配置されていて、膣だけでなくお尻にもなにか太いものが挿入されているのが実感できた。

「今の状況を理解してもらえたみたいだね」
「んッ、んんーッ」
「慌てなくても説明するよ。まだまだ真帆が事実を受け入れられないみたいだからね。少し、ひとりで考える時間をあげようと思ってね。ちょうど、私のボンデージ衣装と一緒に新しい映像を見つけたから、出かける私の代わりにそれを詳しく調べておいて欲しんだ」

 改めて見ると、紅は深紅のボンデージ衣装から普段着へと着替えていた。
 上着を羽織り、これから外出しようとする雰囲気だ。

「ちょっと調べものをしてくるよ。あんまり遅くならないようにするから、留守番をよろしくね」

 それだけ言うと、紅の姿が視界から消えて、再び暗闇に戻ってしまう。一方的に状況だけを伝えられて、真帆は戸惑うばかりだった。

(ちょ、ちょっと待ってよ。私はこのままなの?)

 彼女のいうことに従ってみるとは言ったものの、この扱いは想定外だった。
 慌てて呼び止めようとするも、くごもった呻きに反応はない。
 拘束は相変わらず緩む気配もなく、ひとり暗闇に取り残されたか細い気持ちにさせられる。
 だが、すぐに視界に光が戻ってきた。そこに映しだされたのは、最愛の妹である美帆の姿であった。




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