ビトレイアー・メーカー

【3】 偽りと真実

 壁一面に映し出された私の姿、それは2ヵ月前に専務の出張の同行者として急に抜擢された時のものだった。


―― 商談先で出された紅茶を口にした途端、身体から力が抜け落ち、ソファからズリ落ちていく私…… ――

―― 自由の効かず戸惑う私に対し、それまで商談していた専務と男たちが邪悪な笑みを浮かべた…… ――

―― 力が入らず大した抵抗が出来ぬ私の身体から、紳士の仮面を脱ぎ去り、下種な笑みを浮かべる男たちがビリビリと乱暴に衣服を剥ぎ取っていく…… ――

―― 悔しげに睨み付ける私をあざけ笑い、男たちは用意していた黒革の拘束具と次々と装着して自由を奪っていった…… ――

―― 後ろ手にスッポリと大きな革袋で覆われギチギチとベルトで締め上げられる…… ――

―― 次に細い首にまるで動物のように肉厚の首輪を嵌めさせ、そこから垂れ下がる何本ものハーネスが裸体に巻き付けられていく…… ――

―― 乳房は根元から絞り出され無残に変形し、細腰はギリギリと限界まで絞り込まされていく…… ――

―― 股間部にはリングの付いたハーネスを噛まされ、クリ×トリスを剥き出され、バギナとアナルを無理やり押し広げられて中の秘部を曝け出されていく…… ――

―― 長い脚を乳房の左右に膝がくるまで折り畳まれてM字開脚に小さくまとめられ、まるで肉達磨のような姿に貶められても、今なお必死に抗おうとする私を男たちは足でグリグリと踏み付け、見下した目で下ろす ――

―― そうして、怪しげな薬を肌の隅々に、そして穴という穴に執拗に何度も何度も塗りこまれ、すぐに激しい疼きに悶え苦しみ穴という穴から体液を垂れ流し始めた私を肴に、他の女たちを犯して楽しむ男達…… ――

―― それでも必死に抗い続ける私を、今度は淫具を使って焦らし続け、更には乳首やクリ×リスに穴を開け、次々とピアスを取り付ける…… ――

―― 涎を垂らし、目の焦点が次第に合わなくなってきた私に、無情にも媚薬入りの浣腸を施し、アナルストッパーで排泄を封じて、まるで妊婦のように拘束された腹をパンパンに膨らまさせられて、完全に白目剥く私…… ――

―― そんな私を男たちは吊り上げ、代わる代わる鞭打ち、白い肌に鞭の朱い痕を刻み込んで楽しむ。それによって、私は気絶する事も許されず、次第に追い詰められていく…… ――

―― そして、ついには心をへし折られ、哀訴を繰り返す私を、何人もの男たちが何日も穴という穴を犯し続けていった…… ――


 その記憶のない映像を、私はまるで他人事のように茫然と見つめていた。
 その脇では大の字に拘束された睦美がポロポロと涙で頬を濡らしているのだけど、それでも私には画像が事実であるという実感が湧かなかった。
 そして、投影された映像は次に真っ白な手術室のような場所を映し出す。中央の手術台に横たわっているのは全裸の私で、シミひとつないはずの身体には無数の鞭や凌辱の痣が刻み込まれていた。
 そんな私を取り囲んだ医師たちは、淡々と私の後頭部に極小のメスを入れ、何かを小さなモノを埋め込んでいく。

「あれが、バイオチップです。脳の補助として使うには小型化が長年の課題だったのですが、見ての通り拒絶反応の少ない素材を使い脳の一部を逆にバイオコンピューターとして活用する事で大幅な小型化と省電力化を可能にしました。その副次効果として、この朱鳥のように外部から脳のコントロールが可能な事を発見し、新たなプロジェクトとして推し進めてきました。」

 別の壁に解説図を投影し、詳しい説明を続ける専務の言葉を遠くに聴きながら、ただ淡々と映像を見続ける。
 その後も映像は続き、今度は様々な場所で私が犯されている映像が映し出されていく。


―― 会社の専務の部屋で黒革の拘束具姿で自ら股を開き、隷属の言葉を放ちながら媚を売る私…… ――

―― 打ち合わせ先の会社で、後ろ手に拘束されて商談相手の上でアナルを犯されながら腰を振り続ける私…… ――

―― 高級クラブの個室で、何人もの接待相手に穴という穴を犯され、歓喜の呻き声を上げる私…… ―― 

―― 移動中の社用車後部席で、専務のモノを愛おしそうに頬張り、嬉しげに奉仕をする私…… ――

―― 夜な夜な、専務の指示を受け、まるで痴女のような恰好をして次々と通りすがりの男たちを誘っては、朝まで腰を振り続ける私…… ――


「これが……わたし……?」

 そこに映っているのは、同じ姿かたちをした別人。そう思いたかった。でも、映像の中で永久脱毛させられた股間部に彫られた社章の入れ墨が自分の股間にもあるのを確認させられると、必死に否定しようとしていた私の心がビシリとヒビ割れたように感じた。

「見ての通り、アップデートの末に記憶と認識の改ざんも可能となっており、当人も知らないうちに作り替えられるのは見ての通りです。これを使えば、自分たちに不都合な人物も従順な駒と化すことも可能で……」

 脇に立つ専務が意気揚々と招待客に対してプレゼンテーションをおこなっているのが聴こえるけど、もはやその意味を理解する気力も私からは失せていた。

「そうか……情報を流してたのは、私だったのか……」

 その事実を認識した途端、私の心から何かがゴトリと抜け落ちた。でも、それと同時に親友である睦美が私を裏切ってないと知って、ホッとしている自分が確かにいた。

「さて、それでは次に……」

 専務による次なる指示を受け、私の手が大の字に拘束されている親友のスーツを切り刻んでビリビリと剥ぎ取り始めた。同性から見ても惚れ惚れする透き通るような睦美の白い肌の裸体が徐々に姿を現していく。

――ゴクリッ……

 無駄なく引き締まり、モデルと言っても通用するような見事なプロポーションに周囲の男たちが感嘆の声を上げる。
 それが、なぜか無性に誇らしく感じる自分に気が付き、少し可笑しくなった。

……クスクスッ

 気が付けば私は笑っており、睦美のしっとりとした肌に口を寄せると、ゆっくりと舌を這わせていく。

「だ、だめよッ……あッ、あぁぁぁン」

 必死に耐えようとする睦美だったけど、私が彼女の密かな弱点である耳に熱い息を吹きかけて甘噛みをすると、途端に切なげな声を漏らし始めた。
 耳に舌を挿し入れ、肌に指を這わせていく。そして再び、彼女の肌に舌を這わすと、睦美は上気させた全身にシットリと汗をかきながら、大の字に拘束された身体を身悶えさせ、キシキシと四肢を繋ぎ止めている鎖が軋んだ音を立てた。
 そうして、彼女の身体の隅々まで舌を這わせ、悶え啼かせ続けると、私の背筋をゾクゾクするほど心地よい刺激が駆け抜け、喜びに身体を震わせていた。

「だめッ、朱鳥。正気に戻っ……うぐッ!!」

 必死に訴え続ける睦美の口に唇を重ね封じると、その口腔に舌を差し入れて彼女の舌へと絡ませていく。

「むッうン……うむむッ……」

 戸惑いの呻きを上げる睦美の舌腹に私の舌先を這わせ、絡め取り、唾液を流し込む。それに彼女は驚きの表情を浮かべるのだけど、ゴクリとその唾液を飲み干した途端、嬉しげな音色を響かせ始めた。

「ぷはッ、あ、朱鳥ぁ……わ、私……」

 目を蕩けさせ、顔を赤らめながら何かを伝えようとする睦美の唇に、私はソッと人差し指を当てて、それを留めさせる。

「睦美……貴女が、いつもどんな想いで私を見ていたのか、私が気が付いてなかったと思っているの?」

 その言葉に睦美の目は大きく見開かれ、私を凝視する。でも、その視線に笑顔を返すと、彼女の瞳からボロボロと涙が零れ始めた。
 再び、黙って唇を重ねると、今度は睦美から舌を差し入れてきた。お互いの舌と舌が妖しく絡み合い、抜き差しを繰り返す。
 その一方で、私の右手は睦美の艶やかなセミロングの黒髪を愛おしげにかき上げ、左手は豊乳を揉み上げ、くびれきった細腰から腰部を撫でまわす。すると、睦美は嬉しげな声を鼻先に響かせて啼き、それが無性に嬉しくって、私の愛撫には益々熱が入っていった。
 そうして、次第に拘束された睦美の身悶えが高まっていく。

「あぁぁ……朱鳥……朱鳥ぁ、わたし、もう……」

 黒の濃い瞳を熱く潤ませ、媚びるような眼差しで睦美が訴えてくる。

「朱鳥、これを使いたまえ」

 その声に振り向くと、専務がにこやかな笑みを浮かべながら双頭のティルドを差し出していた。

「はい、ありがとうございます」

 それを嬉々として受け取り自らの秘部に咥えこむと、私はゆっくりと睦美へと挿入していった。

「あぁぁぁ、睦美ぃッ」
「朱鳥ぁ、嬉しいッ」

 お互いに唇を差し出し重ね合わせ、お互いに乳房を擦り付け合うと、私たちは腰を蠢かし結合による甘美な刺激に身を震わせあった。



 もはや自分の意思で喋る自由すらも奪われた私は、目の前の光景をまるでモニター越しに覗き見ているような感覚で、ずっと見させ続けていた。
 デモンストレーションは終わったとばかりに裸になった招待客が背後に立ち、結合して狂ったように腰を振り続ける私たちのアナルに、いきり起ったペニスを押し付けてくる。

「あッ、あ、あぁぁ……」

 メリメリと強引に押し入れられ、直腸を削り取っていくペニスの肉悦に脳を焼かれながら、私が彼らにされた事と同様の事がこれから降りかかるであろう親友の顔を見つめる。

―― 次に目が覚めた時には、いつも通りに睦美と…… ――

 もはや、私には何が現実で、なにが悪夢で、どこまでが自分の意思で動いているのか判断できなくなっていた。

「……それでは、我が社の新製品『ビトレイアー・メーカー(裏切り者製造機)』を、どうか宜しくお願い致します」

 その専務の言葉を最後に、私の意識は徐々に肉悦に覆われたピンクの霧の向こうへと消えていくのだった。



―― END ――