淫獣捜査 隷辱の魔罠

【63】 共闘者

 扉を開けて通路へと戻ると、そこには八祥さんがまだ待っていた。
 部屋に入ってから二時間近くも経過している為、もう去っている可能も考えていた。
 壁に寄りかかった彼は、咥えタバコをしながら手にした端末でなにか確認しているようだったが、すぐに俺に気づいて顔をあげる。
 そして、相変わらず気だるそうな態度のまま濁った目で俺を見つめてくるのだった。
 先ほどまでは、その感情の読めない視線に落ち着かない気分にさせられていた。だが、今の俺の心は落ち着いていて、平然と受け止めることができた。
 それとなく周囲を観察してみると、玲央奈のことを物欲しそうに見ていた会員たちもまだいた。
 それぞれ談話したりと誤魔化しているようだが、こちらが気になってしょうがないのがよく分かる。

「その様子だと上手くいったようだな」
「えぇ、お陰さまで」

 八祥さんに笑顔で応えると、握っていた鎖を引いてみせる。すると扉の影から鎖に繋がれた玲央奈が姿をあらわした。
 先ほどまでの下着姿から変わり、黒を基調としたエナメル素材の軍服風衣装を身に付けている。
 アイドルとしての彼女を知る者なら、それがデビュー曲のステージ衣装に似せたモノだとわかるだろう。
 事実、様子をみていた会員たちが強く反応をみせる。そして、すぐに厭らしい目で玲央奈の全身を舐めるように見ていった。

ーー無駄なく引き締められたスーパーボディ。それを覆うのは、サスペンダーでつり上げられらローライズのホットパンツに、下乳が出るほど短いシースルーのタンクトップ。その上に、軍服をイメージした丈の短いジャケットと軍帽を着用していた。

ーー背後で揃えられた両腕はアームバインダーに押し込まれており、肩を後ろに引いて胸を反らす姿勢を強要されている。
おかげで、タンクトップから溢れんばかりのボリュームあるバストが突きだされていた。双乳に張り付く半透明の生地越しに、硬く尖ったピンクの乳首がよく見て取れた。

ーー首輪の鎖をひかれて、ヨロヨロと足元がおぼつかないのは、後ろ手に拘束されているのに加えて、履かされているロングブーツのせいでもあった。

ーー膝上まである編み上げのロングブーツは、踵が15センチはあるピンヒールなので爪先立ちしているようなものだ。その上、足首にはめられた枷同士を繋ぐ40センチほどの鎖によって足の動きが制限されていた。

ーーそのロングブーツには、3つのコントローラーが差し入れており、そこから伸びたコードがホットパンツの中へと消えている。鈍いモーター音と共に玲央奈の下肢を妖しく揺れさせ、滴る愛液が太ももを濡らしているのだった。

「ーーあンッ」

 首輪の鎖を手繰り寄せ、絞りこまれた細腰へと手をまわすと玲央奈の身体を強引に引き寄せる。
 前のめりになる玲央奈を胸の中へと迎い入れると豊乳がエアバッグのように衝撃を受け止め、ふたりの間で押し潰されて卑猥に変形する様が、なんとも心地よい光景だった。
 顎下を指で引き上げると、軍帽の影から勝ち気な玲央奈の美貌が現れる。その目元は真っ赤に染まり、汗に濡れた頬に乱れ髪が貼り付いていた。眉根を寄せて見上げてくる瞳は激しく潤み、ピンクのリップが塗られた唇を薄くあけて喘いでいる。
 白く綺麗な歯を覗かせる下唇を親指でソッとなぞると、俺は熱い吐息を塞ぐように唇を重ねていく。

「うふッ……んん……うふン」

 ウットリと瞼を閉じた玲央奈が、俺の舌を受け入れて自らも絡めた。
 そうして、俺が流し込む唾液を嬉しそうに咽下して、もっとと潤ませた瞳でねだる一方で、長い脚を俺の身体へと絡ませて、切なげに揺れる下肢を俺の股間へと擦り付けていた。
 その姿はまさに飼い主に飼い慣らされた発情した牝犬で、国民的アイドルにあるまじき痴態だった。彼女を知る者ほどその衝撃は激しいだろう。
 事実、物欲しそうに機会を伺っていた会員たちがショックを受けて、敗者のようにトボトボと無様に散っていく。
 それ以外の者は俺の嗜虐者としての手腕に感心したようで、それを讃えて拍手を送る者までいた。
 徐々に増えていく拍手に、平静を装って応えながらも内心では驚いていた。
どうやら自分の想像以上に、他の会員たちから動向を注目されているようだった。

(だが、どうやら、また関門を越えられたようだな)

 任務を優先して、足手まといになると玲央奈を見捨てていた場合を考えると肝が冷える。密かに安堵した俺は、同時に激しくキスを求めてくる玲央奈の迫真の演技に舌を巻いていた。



 ゲームでの負けを認め、激しい絶頂に茫然自失となった玲央奈を、俺は抱き上げて備え付けのバスルームに連れていった。
 そこで、熱湯を出しっぱなしにしたシャワーの湯気と水音で、監視の目を誤魔化しながら回復を待つことにしたのだった。
 タイルにひかれたマットの上で両脚を抱えて俯く玲央奈は、長い金髪に隠れてその表情は伺えない。ただ、ひたすら待ち続ける時間というのは長く感じられるものだが、それでも俺はジッと待ち続けた。

「……ひとつ……お願いを聞いてもらえますか?」

 俯いたままの玲央奈が不意に呟いた。その声はか細く、弱々しいものだった。

「あぁ、なんでも言ってくれ。質問にも答えるし、嘘もつかないって約束するよ」

 バスルームに連れて来た時点で、俺は全てを話すつもりだった。この先、玲央奈を連れていくなら、どうしても協力が必要だったからだ。
 だから、シャワーの水音と湯気で監視を誤魔化せるこの場所が必要だったわけだが、それでも、話を聞いてもらえる状況をつくる為とはいえ、国民的アイドルに散々好き勝手にしたんだ。殴られるなり、罵声を浴びせられても甘んじて受けるつもりだった。
 だが、彼女からの要望は俺の予想外のモノだった。

「少しの間でいいから……仮面の下の素顔を……見せていただけませんか?」
「あぁ、わかった」

 玲央奈が、なぜそれを求めたかは分からなかったが、俺は迷わずに実行する。信用を得るには素顔を晒すリスクも気にならなかった。
 念のために、カメラのありそうな備え付けの鏡に背を向けて、目元を覆う白い仮面を外していく。
 玲央奈は顔をあげると、素顔を晒した俺をジッとみつめてきた。
 なぜか目を爛々と輝かせて喰い入るように見てくる。その視線が、なんとも気恥ずかしかったが、少女が満足するまでどうにか耐えた。

「……ありがとうございます」
「どう致しまして……まぁ、たいした顔じゃないけどね」
「そうですか? 誠実そうでアタシは好きですよ」

 社交辞令かもしれないが、美少女に真顔で言われると照れてしまう。
 照れ隠しに仮面を付け直していると、玲央奈が恐る恐るといった感じで、質問してきた。

「その……さっきのアレですけど……す、凄く手慣れてるみたいでしたけど……こ……恋人、あッ、いや……奴隷さん……を何人も抱えていらっしゃるのですか?」

 玲央奈の目には、俺が何人もの奴隷を飼う人間に見えているのだろうか。
 そんな人間ばかりが巣食う魔窟に潜入している身としてはありがたい事だったが、一方で取っ替え引っ替え女を抱く軽い男に見えるとも考えて、複雑な気分にさせられる。

(まぁ、涼子さんと離れて、ほぼ全裸の国民的アイドルにあんな事までした現状なら、仕方がないか……)

 内心で苦笑いした俺は、そう問うてきた玲央奈の雰囲気が徐々に変化してきているのに気がついていた。
 当初の溢れでる自信を鎧のように纏って気丈に振る舞っていたのが、今は無防備な生身を晒され、不安げに震えている儚げな少女に見えた。

(喋り方もそうだが……ある意味、これが普通なのかもしれないな。こんな魔窟に味方もいない状況にいたんだ、唯一手を差しのべる俺にすがるしかないよな)

 その不安を少しでも和らげようと、優しい口調を意識して問いに答えていく。

「本当は、奴隷どころか恋人すらいない、しがないサラリーマンだよ。さっきのだって見よう見まねで、SM自体が初体験だったからね」
「……えッ……それって……」

 俺の言葉に驚きをみせる玲央奈に優しく微笑むと、全てのことを語ってみせた。
 説明を聞くに従い、玲央奈の表情は落ち着きを取り戻し、明るい表情になっていく。その笑顔は年相応な少女のもので、本心からだとわかる。

「では、確認しますが、お兄さんに取られた幼馴染で初恋の人が涼子さんで、今は未亡人ですが恋人でもない義姉のワガママでこんな所まで来たって訳ですねッ」
「……ま、間違ってないけど……妙に回りくどい言い方だな……グサグサと心が抉られるんだけど……」

 他人から見たら、なんて無謀で考えなしな行動と思われるのだろう。
 実際、惚れた相手である涼子さんでなければ、俺もこんな無茶なことをしないだけの自覚はあった。

「……そうかぁ……よかった……それなら大丈夫そうですね」

 俺の説明に、ひとしきり納得したらしく、さっきまで不安げにしてたのが嘘のように上機嫌になっていた。

「いや、大丈夫じゃないだろ。ここから脱出するにしても、いろいろ問題が山積みなんだからな」
「それは大丈夫ですッ、だって奴隷になるって言ったアタシをちゃんと護ってくださるんですよね? ねぇ、ご主人様」

 満面の笑みを浮かべて、はにかむ玲央奈の言葉に俺は真顔で即答してみせる。

「あぁ、絶対に護ってみせるよ」

 迷わず断言した俺の言葉に偽りはなかった。

ーー涼子さんも玲央奈も、必ず連れて脱出する。

 それが今の俺の本心からの望みであった。
 それが伝わったのだろう、玲央奈は本当に嬉しそうにしながら、蒼い瞳に涙まで浮かべていた。

「……うん……嬉しいです……それじゃぁ、契約成立ですね」

 差し出された手を握り返して、握手を交わす。これで玲央奈の協力を得られることに成功した訳だった。
 俺も正直なところ単身で不安だった。こうして事情を知る共闘者が傍に居てくれるのが本当に心強かった。

「あぁ、ボロがでないようご主人様を頑張るよ」
「アタシも頑張ってご主人様が自慢できる忠実な奴隷になりますね」

 そう言って瞼を閉じた玲央奈が深呼吸して沈黙する。そして、再び瞼を開いた時には、纏う空気が再びガラリと変わる。
 儚げで従順そうな少女の表情が消えたかと思うと、色香の漂う大人な女の顔へと変貌していた。

(……す、凄いな……もしかして奴隷という役に、もう入っているのか)

 主演映画で役者としての評価も高いというのが頷けた。
 その迫真の演技に圧倒されていると、玲央奈は両手をマットにつくと豊乳を隠そうともしないで、ゆっくりとこちらに身を寄せてきた。
 先ほどの余韻がまだ残る柔肌は紅潮したままで、全身から漂う牝の匂いが俺の牡としての本能を刺激してくる。
 細かい仕草ひとつひとつからも女らしい艶かしさが感じられて、無意識にゴクリと生唾を飲み込んでいた。

(まずいな……また暴走しそうだ)

 先ほどの勝負で激しく反応していた股間が再び硬くなっていた。正直、このままではどうにかなってしまいそうなほど、今の玲央奈にはクラクラさせられる。
 だから、瞳を潤ませた玲央奈が、ソッとズボンの膨らみへと触れると大いに期待してしまっていた。
 細い指がズボンの上から俺の怒張を確認するように触れていく。

(……ん?)

 だが、その指先の動きはぎこちなく、なかなか思うように刺激を与えてくれない。さ迷うように同じような動きを繰り返すばかりだった。
 見れば長いブロンド髪に隠れていた耳は朱に染まり、首筋には汗が伝っている。

(そりゃ、そうだよな……)

 経験のない少女に男の快楽のツボがわかるはずもない。
 だが、わからないなりに必死に奉仕しようとする想いは伝わってきた。

(まったく、こんなところまで涼子さんに似てるなんてな……)

 涼子さんも兄貴と結婚する前は、料理や家事が壊滅的にダメな人だった。それでも意地っ張りだから、兄貴の前では無様なところを見せまいと人知れず努力していた。
 時々、見かねた俺が教えてあげると、それは喜び、必死に特訓していったもので、兄貴に自慢できたと嬉しそうに報告してくれるのを複雑な心境で聞いていた俺だった。

ーー正直、俺は涼子さんに、そこまでしてもらえる兄貴が羨ましかった……

 今、歳の離れた少女が、偽りの関係の為とはいえ、必死に俺に奉仕しようと努力してくれている。その事が俺が欲していた心の渇きを癒してくれていた。
 だが、ここで必要なのは優しい言葉ではないのは、今の俺は充分に理解していた。

「ふぅ……まったく、そんなんじゃ、自慢できる忠実な奴隷にはみえないなぁ」

 突然トーンが変わった俺の言葉に、必死に奉仕を行おうとしていた玲央奈の肩がビクッと震え、俯いたまま動きを止めた。

「これじゃぁ、しっかり躾て俺好みの奴隷にしてやらないとな……そうだろ?」

 続く言葉の意味を理解したのか、ブルッと身体を震わせた玲央奈がゆっくりと顔をあげる。
 そこには被虐の悦楽を期待する牝の表情が浮かんでいた。
 トロンと惚けた瞳から、一筋の涙が頬を濡らす。

「はい、ご主人様ぁ……どうか……ご主人様の好きなように……あぁ……玲央奈を……奴隷に躾て下さい」

 深々と頭を下げる牝奴隷に俺は冷たい目で応じていく。
 そう、これは先ほどまでの俺がサディストを演じていたのと同じだ。今度は玲央奈の協力を得て奴隷と主人という役を演じて、ここにいる連中を騙して涼子さんを取り戻してみせる。
 失敗したら悲惨な最後が待ち構えているハイリスクなゲームだが、きっと勝ち抜いて、涼子さん共々脱出してみせると改めて心から誓った。



 玲央奈のお陰で、俺もようやくご主人様として足が地に着いた気分だった。
 八祥さんと対峙しながら、玲央奈のタンクトップに手を入れて、豊乳を堪能する余裕すらあった。

「……なるほどな、アイツが気に入った理由が少しわかった気がするな」

 口端を僅かに吊り上げた八祥さんは、咥えていたタバコを携帯灰皿で揉み消すと、代わりに懐から取り出したモノを投げてよこした。
 それは今時珍しい携帯用マッチで、裏面にはバーの名前と住所が書かれていた。
 手にしたモノを不思議そうに見ていると、八祥さんはひとり歩きだした。

「そろそろ時間切れだ。俺は今夜は去るが、そこに来れば仕事を受けてやってもいいぜ」

 そう言い残して立ち去っていく八祥さんと入れ替わるように、ひとりの女性が近づいてくるのが見えた。
 年齢は30前後だろうか、栗色の髪をショートボブで切り揃えた肉感的なボディの持ち主で、ハーフなのかエキゾチックな顔立ちと褐色な肌が印象だ。
 素肌に張り付くような白いボディコンドレスが起伏の豊なラインを浮き立たせ、スリットから見える深い胸の谷間は、男なら顔を埋めたいという欲求に駈られる見事なものだった。

「お待たせいたしました。タギシ様からご案内するように仰せつかりました。私はイクと申します」

 ゾクゾクするような妖艶な笑みを浮かべる彼女の首には、銀のプレートに『19』と刻まれている首輪を確認する。
 俺は手にしていたマッチを胸ポケットに入れると、脇にいる玲央奈に目配せをする。
 そして、新たな案内人に連れられて俺は玲央奈を連れて施設の奥へと向かうのだった。


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