淫獣捜査 隷辱の魔罠

【61】 青い瞳

――キシキシ……

 金属が軋む音が室内に鳴り響く。
 俺の目の前に、この国で知らぬ者はいない有名アイドルである翠河 玲央奈がいる。しかも、レースで装飾された高級そうなピンク色の下着姿で部屋の中央で吊られているのだ。
 その状況にした張本人は俺であったが、改めて確認してみても現実感がまるでない目の前の光景であった。

(まぁ、お陰で、有名人である玲央奈の身体を間近にしても、冷静に鑑賞できているのだけどな)

 スラリとしたモデル体型でありながら、ボリュームのあるバストはブラジャーから溢れんばかりで、片脚を吊り上げられて隠しようのない股間部ではショーツの薄い布地越しに肉の隆起を晒していた。

――手を伸ばせば、それを自由に触れられる。

 その事実を噛み締めると、つい口元が綻んでしまう俺であった。対する玲央奈というと、バレリーナのような爪先立ちの辛い姿勢を強いられているというのに、弱音を吐くどころか文句ひとつ口にしていなかった。

(先ほどまでとは、えらい違いだな……)

 玲央奈が決して余裕というわけではなかった。柔肌にジンワリと汗の珠を浮き上がらせながら、歯を食いしばって耐え、ジッと俺を見つめている。
 俺はその瞳を見た瞬間、以前のテレビ番組でみたある光景を思い出していた。単調で厳しいトレーニングに、文句ひとつ告げずに黙々と練習に打ち込んでいた玲央奈――俺の中で、その姿と今の玲央奈が重なった。
 同時に、目の前の少女が俺の告げたルールを受け入れ、その結果による約束が守られると信じた事にも気が付いた。

(そんなに簡単に信じ……いや、それが最善な行動だと判断したのか……)

 現状で玲央奈ができる選択肢はあまりに少ない。その中で俺の提案にのる事が今できる最善の手であると、この状況下で冷静に判断したのは流石というべきだろう。

――自分で決めた事に向かって愚直なほどまっすぐに突き進む。

 番組のインタビューで玲央奈自身が語っていた言葉だ。
 得てして視野の狭くなりがちな性格でもあるはずだろうが、普段はそれを補ってくれる優秀なスタッフがサポートしてくれているのだろう。
 故に他人を信頼し、迷いを捨て、余計な事を考えずに、ただ前だけを見つめて今できる事に全力を尽くす。そういうシンプルすぎるほど迷いのない行動力もまた、アイドル翠河 玲央奈の大きな魅力のひとつであった。

(まったく、そういうところも誰かさんにソックリだよ)

 迷いのない青い瞳を見つめ返しながら、俺は本来の目的を思い出して気持ちを切り替えていく。
 普段なら応援したくなる玲央奈の性格も、嗜虐欲にまみれた今の俺からすれば涎の垂らさんばかりのご馳走美だ。

(その真っ直ぐさがどこまで通用するのか、確かめさせてもらおうか)

 脱いだ上着を椅子にかけ、カフスを外して袖を捲ると、玲央奈の周囲を回るようにゆっくりと歩き出す。
 視界から俺が姿を消すたびに、緊張でわずかに身体が強張るのがわかる。その背後から静かに近づいた。

「あッ……」

 突然、事前にポケットの中に忍ばせておいた黒い布で視界を塞がれて、玲央奈が思わず声をあげる。
 そのまま頭の後ろでギュッと結わえて目隠しを完成させると、玲央奈の耳元へ口を近づけ、優しく囁きかけた。

「目がみえないと、不安だろう?」
「大丈夫よ……ちょっとビックリしただけ。さて、次は何が出てくるのかしら?」

 動揺した心を瞬時に落ち着かせ、玲央奈は笑みすら浮かべて減らず口をたたいてみせた。

「そうだな……まずは、その緊張で強張っている身体をほぐしてみようか」
「……え?」

 眉を顰める玲央奈に笑いかけながら、ワゴンの上から鳥の羽を使った刷毛を手に取った。羽の先端を、綺麗なラインを描く背筋をなぞるようにスッと這わせていく。

「――ひゃッ!? な、なに!?」

 視界を封じられたところに突然、与えられた感触に身体が反射的に反応してしまう。逃げるように吊られた身体が仰け反り、繋ぎ止めている枷の金具がガチャガチャと音を立てた。

「安心しろ、ただの刷毛だよ」
「それで何を……あン」
「ははは、いい感度だ。他の場所はどうだ?」

 玲央奈の身体の反応の良さに満足すると、今度は無防備な脇へと羽の先を走らせていく。

「あぁッ、くぅッ、くすぐったい」
「その割に、色ぽい声がでてるぞ」
「そ、そんな訳、うッ、くぅぅン……あぁぁッ」

 必死に歯を食いしばろうとも、堪えきれずに声を漏らしてしまう。
 くすぐったいという感触があるのも事実だろう。だが、時間と共に洩れる吐息は熱も持ち、悩ましく切なげな音色が混ざり始めていった。

――キシキシ……

 刷毛から逃れようと、うねる裸体が鎖を軋ませる。
 だが、拘束された身では逃げきれる訳もなく、すぐに切っ先に柔肌を捉えられて、更に悩ましい声が溢れだすことになった。



「――ッ、あぁぁン」
「いい感じになってきたな」

 汗を吸い込んだ毛先が重く感じられるようになると、ようやく俺は責めを中断した。途端に、グッタリしたように吊り上げる鎖に身を預ける玲央奈。

――まるで情事の後のように呼吸を乱し、ブラジャーの中に窮屈そうに納められている乳房が、激しく上下に動く。

――ほんのりとピンク色に染まった身体。そのきめ細かな肌の上を汗の珠が伝い、滴り落ちていく。

――汗を吸い込んだ下着は肌に張り付き、吊り上げられた片脚で剥き出しの股間部では、黄金色の茂みが透けて見えた。

――乱れたフロンド髪が汗で頬に張り付き、薄く開かれた口元から見える白い歯と舌先が、なんともエロチックに感じられる。


 吊られた少女が纏う雰囲気が艶やかなものへと変質し、大人の女が持つ牝の色香を漂わせていた。

(――ゴクリッ)

 思わず手を伸ばして頬に張り付いた髪をのけると、掌で触れる。

「あぁン」
 
 それだけで玲央奈は悩ましい声を漏らし、身を震わせた。
 そのゾクゾクする溢れ出す声を塞ぐように、俺は唇を重ねていた。

「うぐ……うふン」

 唇をすり合わせ、舌先で歯茎をなぞってやると玲央奈の息遣いが更に激しいものになった。
 侵入させた舌先を庇むどころか、玲央奈自らも我慢できないとばかりに激しく絡めてくるほどで、その反応に俺は心の中でほくそ笑んでいた。

(もっと手こずるかと思ったが、嬉しい誤算だな)

 キスを交わした感触から玲央奈は性的な経験が少ないと踏んでいた。
 そこで、焦らずにじっくりと性的な感度を高めていこうと思っていたのだが、思いのほか上手くいったようだ。
 汗で玲央奈の下着が濡れきる前に、ショーツの谷間に僅かだがシミが出来ているのも既に確認していた。

(ならば、これならどうだ?)

 ベーゼを交わしながら、右手で玲央奈のバストをブラジャーごと鷲掴むと揉み立ててみる。

「んんッ、あぁぁン」

 途端に、鼻先から悩ましい音色を奏でたてる。
 そこに嫌悪の気配はなく、うっとりと身を任せてくる気配すらあった。

(玲央奈の俺に対する嫌悪感が予想してたよりも低いな……先ほどの禿げオヤジが強烈だったお蔭だろうか……)

 手にしていた鳥の羽を投げ捨て、左手の指先でショーツ越しの秘肉の溝に触れると、グジュリと大量に水分を含んでいる感触と共に指先が濡れた。
 そのまま、縦に指を這わせるとビクンッと玲央奈の腰が跳ねる。

「あぁ、そ、そこは……」
「そこは……なんだい?」

 慌ててキスを振りほどいて恥ずかし気に訴える玲央奈に、俺は意地悪く聞き返しながら、更に指を往復させる。

「ひぃッ、だ、だめッ!! び、敏感すぎて……あぁぁぁッ」

 玲央奈の反応からそこの場所を特定すると、今度は重点的に爪先でグリグリと刺激を与えてやる。
 途端、吊られた身体が弓反りになってビクビクと痙攣を繰り返しはじめた。

「ははは、良い反応だなッ」
「ひッ!? ゆ、ゆびを……は、はなし……ひぃぃぃッ!!」

 玲央奈の言葉を聞いた途端、願いとは逆に更に激しく指先で刺激を与えていく。
 そして、薄い布越しでもわかるほどの隆起してきた肉の突起を、爪先で摘まみあげてやった。

「悪いなッ、そう言われると、もっと虐めたくなるんだよッ」
「ひッ、ひィッ、だ、だめッ、だめぇぇッ」

 ブロンズの長髪を振り乱し、悲鳴のような切羽詰まった声をあげる玲央奈。
 その声が高まれば高まるほど、俺の口元の笑みは深まっていった。


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