淫獣捜査 隷辱の魔罠

【60】 ルール

――ゴクリッ

 余程、喉が渇いていたのだろう。冷えたシャンパンが口の中に注がれると、玲央名は喉が大きな音を立てるのに構わず、一気に飲み干していた。

「ッ!?……ぐふッ、ごほッ、ごほッ……」
「ははは、そんなに一気に飲み込めば流石にむせるだろ、慌てず飲めよ」
「はぁはぁ、そ、そう思うなら……ゴホッ、グラスで……うんんッ」

 苦笑いを浮かべる俺に何かをいいかけるが、再び口移しで口を塞いで意地悪く封じてやった。ただし、先ほどとは違い、注ぎ込む量を小分けにしてやる。
 コクリコクリと俺から与えられる水分で何度も渇きを潤していく。その合間に俺は、舌とアルコール混じりの唾液を吸って、存分に有名アイドルとのキスを愉しんでいた。

「むぅ……」

 俺によって一方的な状況に追いやられ、それに甘んじているのにどうにも我慢できないのだろう。予想通り、負けん気の強そうな玲央名は、不機嫌さを隠そうともせずムッとしてみせる。

「まだ、お代わりはいるか?」
「結構よッ!!」

 僅かに頬を膨らませて、プイッと顔を背けてみせた。
 僅かながらも反抗の意思をみせる少女には悪いが、そんな態度すらも、画面越しでは見られない翠河 玲央奈という生の人物を感じられて俺は喜んでしまっていた。

「まったく、そんなにプリプリ怒ってるとアルコールが良く回るぞ」
「う、うるさわねぇ、しょ、しょんなこと……ッ!?」
「ほら、言わんこっちゃない。ははははッ」
「うるしゃい、わらうにゃッ!!」

 舌の回らぬ自らの言葉に、羞恥で耳まで真っ赤にさせながら、玲央奈は怒鳴り散らす。
 その様子からアルコールに慣れてないのは一目瞭然で、一生懸命背伸びをして大人に見せている姿に、俺は堪えられず腹を抱えて笑い出してしまっていた。
 それが、余計に子供扱いを嫌う少女の気持ちを逆なでる行為であるのは自覚していた。だが、周囲の視線から解放された気の緩みもあり、今は、それを止める事が出来なかった。



「あー、笑った、笑った」
「……むぅ」

 ようやく俺が笑い止む頃には、玲央奈の酔いも落ち着いてきていた。

「そう睨むなよ……と言っても無理な話だよな。玲央名にとっては、俺も部屋の外の連中と大差がないだろうしな」
「…………」
「なら、一つ教えておいてやるよ」

 腰をかがめて顔を近づけた俺に、またキスされると思ったのだろう。
 困ったように視線を漂わせる玲央奈の耳元にそっと囁きかけた。

「ここに連れ込まれた以上、もう何事も無く帰れると思わないことだな。遅かれ早かれ誰かに犯されるのは、まずは変わらないと思うぞ」
「――ッ」

 告げられた事を、ある程度は覚悟していたのだろう、だた、悔しげに唇を噛んで肩を震わせる。
 その様子に俺は肩を竦めてみせた。

「だがな、もし俺の奴隷になるっていうなら、他の会員たちが手出しできないようにしてやれると思うぜ」
「……それって……どうせ貴方に犯されるってオチよねッ」
「まぁな。正当なる対価ってヤツだと思うがな。よく考えてみろ、俺だけで終わるか、他の変態オヤジどもの相手もするか……どっちがマシだと思う?」
「……そ、それは……って、それで納得できないでしょッ」

 一瞬だけ悩む素振りをみせたが、改めて眉をつり上げ、益々、不機嫌さを増していく。
 そんな少女の様子に苦笑いを浮かべて、ひとつの提案を提示するのだった。

「まぁ、とはいえ、俺もイヤイヤ相手をされても興醒めだからな。どうせなら、お互いが納得できるよう、ひとつゲームでもして決めないか?」
「……ゲーム? 何をしようっていうのよ」
「簡単な事だよ。60分の間、玲央奈が俺に奴隷になるって言わなかったら玲央名の勝ちだ。俺は玲央名を犯さず、他の会員からも守ってやるよ」

 露骨に胡散臭そうな表情を浮かべていた玲央名だが、説明を聞き終えた途端、今度は俺を馬鹿をみるような目で見つめてくる。

(ホント、よく表情が変わる子だ)

 今まで知っていたクールなイメージとは違い、玲央奈は意外にも感情が表に出やすい少女だった。
 恐らくそれは当人も自覚しているのだろう。それを隠すためにカメラの前では表情を抑える努力をしている為に、今では実際とは逆のクールなイメージが世の中に広まったのだろう。だが、この表情豊かな姿こそが本来の玲央奈という少女の姿なのだと俺は理解していた。
 同時に、そんな意外な一面を知るたびに、俺は胸の奥がチリリと焼けるような感覚に襲われていた。

「まッ、とはいえ自信がないと言って尻込みされても、拒否権なんてないんだけどな」
「――なッ!? い、言う訳ないじゃないッ! バ、バッカじゃないのッ!!」
「ほーッ、なら問題ないよな。まぁ、精々頑張ってくれよ」
「うッ、ぜ、絶対言わないから、ちゃんと約束を守りなさいよッ!!」

 強気なセリフを吐いてみせる玲央奈に背を向け、俺は左手の壁へと向かった。そこは壁一面がガラスケースになっており、内部には様々な責め具が並んでいる。
 流石に、涼子さんたちに使われたような異形な試作品の姿はないが、それでも素人の俺には用途もわからない品がいくつも混ざっていた。

「ちょっと、わかってるの? ちゃんと返事をしなさいよッ」

 不安を隠そうと、苛立ちをみせる玲央名の声を背に受けながら、俺は目ぼしい品を手に取っては、傍にあるワゴンの上に置いていく。

(上手く玲央名を誘導する事ができた……)

 これでゲームに勝とうが負けようが、結果に関係なく玲央奈が自分の意思で俺についてくるように仕向けれるだろう。心の赴くままに行動した結果、こうして少女を変態どもの毒牙から救える可能性がでてきたわけだ。
 更には、有名アイドルでもある美少女をサド男らしく玩ぶ姿をカメラに見せることが出来れば、その向こうで見ているというオーナーの目に留まるかもしれない。
 もし、そうなれば、涼子さんとの合流を待たずして発信機のボタンを押すチャンスがでてくるかもしれない。だから、これらは涼子さんをすぐに助け出せる可能性にも繋がる。
 あとは如何に派手に責め立ててみせるだけ、それはフリだけでも充分なはずだった。

(……だが……)

 気が付けば、心の奥からある欲求が沸々とわき上がっていて、いつのまにか俺の心を埋め尽くさんばかりにまで大きくなっていた。

――目の前の美少女の、まだ知らぬ素の姿をもっと見てみたい……

 責め具をひとつ手に取るたびに、その想いがどんどんと強まっていく。

――あの透き通るような白い柔肌に、手にしている鞭を振り下ろしたらどんな表情を浮かべるだろうか……

 怒り、睨み付け、泣き叫ぶ……いずれの反応をしめすか。それも、今、俺が望めさえすれば、すぐに答えを知ることができる状況にいる。

――ゴクリ……

 キスすらぎこちない少女を、目の前の道具を使って悶えさせ、牝として自らの手で開花させられたらと考えてしまう。

(ははッ、想像するだけで、ゾクゾクするな)

 身体はズボンの中で硬くなるほど興奮しながら、それでいて頭はドンドンと冷めていく。
 そんな冷たい興奮に浸りながら、玲央名を屈服させて、淫らな姿へと堕としたいという欲求を噛み締める。
 それによって、踏み留まっていた俺の理性は完全に押しやられ、昏くドロリとした欲求が心を真っ黒に染め上げていった。

「ねぇッ!! ちょっと聞いて……いる……の……ッ!?」

 悪態をついていた玲央奈だが、振り向いた俺と目が合った途端に息をのむ。

「あぁ、聞いてる。約束は守るよ」

 顔を強張らせる玲央名に笑みを返しながら、責め具を載せたワゴンを押して、ゆっくりと歩み寄っていく。

「どうした、怖じ気づいたか?」
「えッ……そ、そんな訳……ないじゃないッ」
「そうか、それは良かった」

 垂れ下がる鎖のひとつを掴むと引き下ろして、先端に付いている枷を玲央名の右足首へとガチャリとはめた。

「折角、邪魔な理性を押し退けたんだ、存分に愉しませてもらうぜッ」
「え、なにを……ま、まさか……」

 リモコンを操作して鎖を巻き取り始める。ジャラジャラと鎖が音を立てながら、玲央名の右脚を引き上げはじめた。

「ダンスのレッスンで、本職ダンサー達から身体が柔らかいと褒められてたよな」
「くッ、こんな……」

 玲央名は抗おうと試みるのだが、それは無駄な努力だった。それでも、黙って受け入れられる玲央奈ではなかった。
 必死に足掻く間に、ワゴンから黒革製の足枷を手に取ると、爪先立ちしている玲央名の左足首に素早く装着する。
 そして、床に設置されているU字フックへとナフカンで繋ぎ止めていった。

「あぁ……そんな……」

 遂に、抵抗むなしく右脚は、膝が胸につくほどまで高々と吊り上げられた。股間を無造作に曝け出す姿になって、ようやく鎖の巻き取りを停止させる。

「さて……」

 玲央名にもよく見えるよう、目の前のテーブルにデジタル式のタイマーを設置する。

「ゲームを始めるとしようか」

 正確に数を減らし始めた表示を確認すると、俺は玲央名にそう宣言するのだった。


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